二人の距離~やさしい愛にふれて~
「違うよ、恭吾にしかできない。俺も理花の笑顔好きなんだ。だからまた理花には笑っていてほしい。理花をあんな風にしたやつらが憎いし、どうにかしてやりたいと思うけど…相手がお偉いやつらの子供らしくてさ、弁護士に任せるしかないんだ…。だから、せめて理花が笑えるようになってほしい。」

陽斗は手で顔を覆うと涙を流す。恭吾の肩に置かれたままの手はかすかに震えていた。

「だめかもしれないけど、俺ができることは何でもするつもりで来たから…自信なんかないけどやってみます。」

「ありがとう。」

その夜は気を使わないでいいようにと恵子たちがホテルを予約してくれていた。
独りだと落ち着かないと、陽斗と一緒にホテルに泊まった。

初め二人は他愛もない話をしていたが、恋愛の話になった。

「付き合ってる彼女はおったけど…別れた。理花のそばにおったら何で?って聞かれるやろ?誰にも話したくないけん…。」

陽斗は周りの誰にも理花の話はしていないらしかった。誰から噂が広がるかわからないからだ。
被害者は何も悪くないはずなのに好奇な目で見られ生きづらくなる、それを懸念して陽斗は必要最低限の交友関係以外を絶っていた。

「恭吾が協力してくれて本当に感謝しとるよ。こうやって話ができて俺も救われとるけん。恭吾は?アイドルみたいな顔しとるけんモテるやろ?」

「あ~、モテなくはないですけど…彼女作ったら束縛されてキツくて、それからはフランクな関係しかしてきてないっす…」

「都会の若者は…フランクな関係ってすごいな…」

陽斗は答えづらそうに話す恭吾にわざと冷たい視線を送った。
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