冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
ドキドキと早鐘を打つ心臓を落ち着けてから、自室として貰った部屋で急いで身支度を済ます。

そうして三週間で随分と慣れ親しんだリビングルームに行くと、すでにVネックのニットと上品なパンツ姿の宗鷹さんがキッチンに立っていた。

寝起きの艶やかさや獰猛さはどこへやら、いつもの凛然とした御曹司様にホッとする。

だって、ずっとあんな様子だったら、ドキドキし過ぎて私の身が持たない。
脳内に残る甘い囁きに再び頬に熱が集まりそうになり、霧散させるようにぶんぶんと首を振った。

カウンターの上にある洗練されたオブジェのようなフルーツバスケットから、新鮮なフルーツをいくつか手に取って吟味している様子を見るに、今からスムージーを作るみたいだ。

今日までの三週間、私は本当にほとんどの家事をやらせてもらえなかった。
彼曰く、最低一ヶ月間は彼の定めた〝療養期間〟なのだそうだ。

『急な環境の変化で体調不良になるとも限らない。この数年間の疲れを癒すために何も気にせず過ごしていてくれ』と切実な表情で告げられては、反論できない。
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