冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
普通に美味しいけど、まだまだ家庭的といったところか。いつか宗鷹さんを唸らせるのが目標だ。

湯気の立つマグカップを手渡すと、「ありがとう」と彼は素直に受け取る。
それからマグカップに口を付けてひとくち飲むと、「今日の豆はゲイシャか」と呟いた。

無表情でクールな様相だが、眉根を寄せていかにも不味そうな顔をしていないということは、合格点だったのだろう。

ゲイシャは酸味のあるフルーティーな味わいが特徴の珈琲豆だ。
ちょっぴり甘くて穏やかな朝にはぴったりだと思って、チョイスした。お気に召していただけたようで嬉しい。

「食後のコーヒーくらいしか、お礼ができなくてごめんなさい」

「いいや。毎朝、君の淹れるコーヒーが飲めるなんて奇跡だからな。それだけで十分嬉しい」

「それって、もしかして私がコーヒーも淹れられないと思ってたって意味ですか? そりゃあ料理は入門者ですが、ポジティブに言うなれば伸びしろが無限大っていうか、とにかく練習次第ですっ」

むうと唇を尖らせながら彼の隣にぽすんと座る。
< 139 / 162 >

この作品をシェア

pagetop