冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
実際は彼の言う通りコーヒーも淹れられなかったので胸は張れないが、何事もまずは石の上にも三年!
根気強く料理の勉強を続けていくのが重要なのだ。
冷え対策もしっかり行えばいいし、三年後の成長ぶりにはぜひ期待して欲しい。

ふてくされる私を見て、彼はなぜかふっと目元を緩める。

「そうじゃない」

そして僥倖を噛みしめるような、穏やかな声音で否定した。

「君が俺の妻になって、こうして毎朝手ずからコーヒーを淹れてくれる。その時間が貴重だと言っているんだ。俺にとって人生でこんなに嬉しい出来事はない」

「え、っと。そうですか」

「そうだ。家で過ごす時間が、こんなにも尊いものだとは知らなかった」

彼は持っていたコーヒーのマグカップをことりとテーブルに置くと、その手で私の後頭部を撫でた。

とくり、とくり、と幸福感が胸にいっぱいに広がる。
思いがけず真正面から褒められて、ひどくくすぐったい気持ちになった。

「……どうしよう。私、すごく嬉しいです」
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