冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
――とにかく、何事も〝石の上にも三年〟。
まだ何も成し遂げていないんだから、頑張らなくちゃ。
心が折れそうな時はいつも、お祖父さまの座右の銘を胸に強く頷く。
私にとって受付係は少し苦手な人々との職場だったが、とにかく毎日櫻衣商事のために頑張って……頑張って……。
約三年間勤めた末に、おとといの金曜日をもって、ようやく退職したのだった。
父の建てた世田谷の邸宅を売り払い、祖父母の遺した櫻衣家本邸である洋館に引っ越した私たち家族の生活は、新入社員だったあの頃と比べると随分変わったように思う。
家族揃っての外食はほとんどしなくなったし、パーティーの度に母が仕立てていた着物や私の振袖も、すべて売り払ってしまった。
父は家族の前では絶対に口にしないが、櫻衣家の経済状況の悪化は、会社の経営がいよいよ厳しくなっている証拠だろう。
会社や社員のためならば、まずは自分の身を切る。父はそういう経営者なのだ。
櫻衣商事は今が踏ん張り時。
なのに……自分の心が限界を迎えたからといって、会社を離れる選択をした私は責められて、当然だ。
そう覚悟していたのに、退職した理由を話し終えた時、家族は誰も私を咎めたりしなかった。
それどころか、まるで自分のことのように怒りに燃えているではないか。
まだ何も成し遂げていないんだから、頑張らなくちゃ。
心が折れそうな時はいつも、お祖父さまの座右の銘を胸に強く頷く。
私にとって受付係は少し苦手な人々との職場だったが、とにかく毎日櫻衣商事のために頑張って……頑張って……。
約三年間勤めた末に、おとといの金曜日をもって、ようやく退職したのだった。
父の建てた世田谷の邸宅を売り払い、祖父母の遺した櫻衣家本邸である洋館に引っ越した私たち家族の生活は、新入社員だったあの頃と比べると随分変わったように思う。
家族揃っての外食はほとんどしなくなったし、パーティーの度に母が仕立てていた着物や私の振袖も、すべて売り払ってしまった。
父は家族の前では絶対に口にしないが、櫻衣家の経済状況の悪化は、会社の経営がいよいよ厳しくなっている証拠だろう。
会社や社員のためならば、まずは自分の身を切る。父はそういう経営者なのだ。
櫻衣商事は今が踏ん張り時。
なのに……自分の心が限界を迎えたからといって、会社を離れる選択をした私は責められて、当然だ。
そう覚悟していたのに、退職した理由を話し終えた時、家族は誰も私を咎めたりしなかった。
それどころか、まるで自分のことのように怒りに燃えているではないか。