冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
「一応は、そうなるのかな? 今までずっと、お客様との会話は些細なやりとりも全部手帳にメモしてて。それを少しずつ暗記したり、先方のアポイントメント前に確認したりしてたの。ちょっとした雑談にも、大切な事柄があるから」
愛用の手帳には、いつ、何社の誰と、どんな話をした、なにが趣味だそうだ、などの詳細を全て綴っており、そのデータを暗記して会話に努めていた。
ちょっとした世間話の中にも、櫻衣商事により好印象を持ってもらえる話題や、重要な取引に関係しそうな糸口が存在する。
私は櫻衣商事の顔として、少しでもプラスになればと力を尽くしていたのだが、少しは貢献できていただろうか。そうだったのなら嬉しい。
「いきいきと楽しそうに仕事をしていると思っていたが……現実は、違ったようだな。辛い思いをさせた」
「ううん、そんなことない。就職の道は私が望んだんだから」
「いいや。お前が頑張っているようだから、この話は保留にしていたが……。もっと早く伝えれば良かったと、今さら後悔しているよ」
父が言い難そうに言葉を濁すので、「なんのこと?」と首を傾げる。
そんなに後悔するような、急いだ方がいい話なのだろうか?
真剣な表情をする父の前で私は居住まいを正すと、そっと窺うように視線を向ける。
父は一度目を瞑ってから、ゆっくりと開き、私を見つめた。
「お前に良い縁談がある。結婚しなさい」
愛用の手帳には、いつ、何社の誰と、どんな話をした、なにが趣味だそうだ、などの詳細を全て綴っており、そのデータを暗記して会話に努めていた。
ちょっとした世間話の中にも、櫻衣商事により好印象を持ってもらえる話題や、重要な取引に関係しそうな糸口が存在する。
私は櫻衣商事の顔として、少しでもプラスになればと力を尽くしていたのだが、少しは貢献できていただろうか。そうだったのなら嬉しい。
「いきいきと楽しそうに仕事をしていると思っていたが……現実は、違ったようだな。辛い思いをさせた」
「ううん、そんなことない。就職の道は私が望んだんだから」
「いいや。お前が頑張っているようだから、この話は保留にしていたが……。もっと早く伝えれば良かったと、今さら後悔しているよ」
父が言い難そうに言葉を濁すので、「なんのこと?」と首を傾げる。
そんなに後悔するような、急いだ方がいい話なのだろうか?
真剣な表情をする父の前で私は居住まいを正すと、そっと窺うように視線を向ける。
父は一度目を瞑ってから、ゆっくりと開き、私を見つめた。
「お前に良い縁談がある。結婚しなさい」