冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
「……えっ?」

告げられた言葉が、頭に入ってこない。

「良い縁談があるから、結婚しなさい……って、えぇぇぇっ!?」

唐突すぎる結婚の提案に、私は「冗談よね?」と引きつった笑みを浮かべる。

「いいや、真剣な話だ。『菊永ホールディングス』の御曹司から直々に話があった。かれこれ、もう二年も前のことだ。宗鷹くんはずっと、お前との結婚を待ってくれている」

ちょっと待って、菊永ホールディングスの御曹司? それに、二年前から待っているってどういうことなの……?

株式会社菊永ホールディングスと言えば、老舗アパレル事業会社だ。
戦後から平成初めにかけて、その会社規模は櫻衣商事と同等だったが、今では完全に追い抜かれている。
令和に入ってからの成長ぶりは特に目覚ましく、菊永ホールディングスこそが業界最大手と言って良い。

そんな会社の若き獅子と名高いのが、現在三十二歳という取締役副社長の菊永宗鷹さんだ。

確かにこの二年間のパーティーでは、彼がパートナーとして女性を連れているのを見かけたことはないが……それ以前は、いつも違う女性をパートナーにしていたように思う。

だからと言って仲睦まじい様子でもなく、女性が一方的に熱を上げている雰囲気だったので、来るもの拒まず、去るもの追わずというタイプなのかもしれない。

でもとにかく、来るものがセクシーでグラマーな自信家美女ばかりだったのは事実だ。
……なぜ見た目も中身も正反対の私なんかに縁談を? 結婚相手なんて、その中から選り取り見取りだろうに。
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