冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
そう言えば、菊永ホールディングスの御曹司から縁談があった時期も、今から二年前の出来事だ。
もしかして、ふたつの問題には何か因果関係があるのだろうか?

私の頭の中は、湊征が言い放った『政略結婚』『M&A』『保身のための道具』という言葉で埋め尽くされる。
突然自分に降りかかった不穏な知らせに、心がまったく付いていけない。

心臓が嫌にドキドキして、不安と心配で胸がいっぱいになった。

「これ以上、櫻衣商事には猶予がない。将来のためを思えば、余力が尽きるまでに確実な幸せを手に入れるべきだ。澪にとっても、この縁談が一番いい」

「余力が尽きる前に、amnisの日本上陸を必ず成功させる。他人の手は絶対に借りません」

まずは最初から説明してほしいのに、父親と息子の攻防戦はヒートアップするばかり。
菊永ホールディングスの御曹司との縁談話から一変、弟が指揮をとるブランドが絡んだ会社の経営方針の話になり、私は途端に蚊帳の外になった。

お母さまは「あなた、落ちついて」と必死にお父さまを宥めながら、私にも視線で助けを求めてくる。

お母さまに止められないのなら、私にはなおさら無理なんじゃないかな?
そう言いたいのをぐっと飲み込んで、私は『わかった』とばかりに急いで頷く。

と、とにかく、ここは私が長女として場を収めなければ。

「ねえ、お父さまも湊征も、まずは最初から説明を――」

「姉さん、ここに居ても埒が明かない。僕と一緒に行こう」

隣に座っていた湊征は私の言葉を遮ると、すくっと立ち上がり、突然大きな手のひらで私の手首を取った。
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