冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
彼が日本滞在中に使用する自宅を実家からマンションに移して、すでに二年は経過している。しかしお互い忙しい時期だったため、訪問する機会は一度もなかったのだ。

「遺産相続の時にお祖父さまから譲られた物件だよ。有難く使わせてもらってるんだ」

【湊征。仲良く過ごしなさい】という遺言書とともに譲られたここは、三年前に売り出された新築物件で、祖父は最初から湊征のために購入していたらしい。

お祖父さまの購入した物件とはいえ、私が働いて稼いだお給料では、とてもじゃないが月々の管理費も支払えないだろう。
姉弟格差というか、可愛い弟の目を見張る成長ぶりに驚きである。

「遺言の内容を理解できずにいたけれど、もしかしたら今日のために準備していたのかもしれないね」

そう言って彼はこちらに何かを手渡す。受け取ると、それは一枚のカードだった。

「なあに? これ」

「姉さんの新しい家の鍵。今日から姉さんにはここを貸すから」

「えっ」

ぱちくりと瞬きをして湊征を見上げると、彼はわずかに眉を下げ、手のかかる妹を見守るような表情を浮かべた。

「いい機会だから、姉さんも実家から独立するべきだよ。そのためにも、まずはここで一人暮らしを体験してみたらどうかなって。半分以上は仕事部屋で使ってるけど、姉さんが泊まれる部屋はあるし」
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