冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
私が女子高生の時など、華道部で帰宅時間が遅くなろうものなら、『夜道は危ないから』とわざわざ校門まで迎えに来るほどだった。

当時は車で通学をしていたから夜道だって安全だし、信頼の置ける運転手さんがいるからと言っても、聞き入れてもらえないほどで……。
イケメンな弟さんのお迎えなんて羨ましい! と友人には騒がれていたけど、その度に私が弟の自由な時間を奪っているみたいで、心が痛んだ。

今回の件が、また弟の自由な時間を奪うことに、繋がらないといいのだけれど……。

「それじゃあ早速、姉さんの入り用の物でも買いに行こうか」

湊征は爽やかな笑みを浮かべ、私の手をさらりと取って握りこむ。
そのまま、彼は明るく楽しげな足取りで家の中を一通り案内すると、私を再び車の助手席に押し込んだ。



その日の夜は、生活必需品を百貨店で購入してからレストランで食事をした。

湊征の家に帰宅後、貸してもらえることになった部屋で落ち着いた私は、スマートフォンを手に取ってメッセージアプリを開く。
家出……ではないけれど、文字通り実家を飛び出してきてしまったのだ。
両親への罪悪感で押しつぶされそうになりながら、状況報告と謝罪をするための文章を打ち込んだ。

【湊征の家で少しの間、一人暮らしをすることになりました。どうか心配しないでね】
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