冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
食後のコーヒーは、ドリップコーヒーに初挑戦した。
説明書通りにお湯を注いで飲んでみると、思っていたよりも少し酸味が強くて、味も薄かった。

「う〜ん。もしかして、濃くするためにはお湯を淹れる速度が重要とか? 明日はもっとゆっくり注いだら、美味しくできるかもっ」

なんだか小さな事でもワクワクしてしまう。
実家だと、私が食事を作るためにキッチンに立つ機会はまったく無い。

専門職の方がやってくれていたというのもあるが、私は幼い頃から体が弱かったたため、心配性の母が『冷えて風邪を引かないように』と水に触れさせないよう徹底していたからだ。
水回りの掃除はもちろんのこと、料理や洗濯の手伝いすらさせてもらえた試しがない。

料理経験といえば、恥ずかしながら学校の調理実習くらいだけれど、今日からは湊征の書斎から借りたお料理本に習い、精一杯頑張るつもりだ。

弟を見送るためにいつもより数時間早起きしたが、慣れない家事をするとなると手際の問題でどれほど時間がかかるかわからないので、早速掃除を始めていく。
近所迷惑になるといけないので、まずはあちこちを乾拭きして埃を取ったり、窓を磨いてみた。

九時を過ぎてからは、いつも家事のお手伝いに来てくれている三並さんの真似をして、掃除機の本体を左手に持ち、床を傷つけないようにしながら右手で掃除機をかけた。
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