冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
それがなんだか意外な気がして、思わずじっと見つめてしまう。
宗鷹さんと言えば、パーティーで挨拶を交わす機会があってもどこか仮面を被ったような笑顔を浮かべていて、心を見せない冷徹な人物という印象があった。

だから、こんな風に迷惑を掛けていたら、もっと冷たく突き放すような対応をされるものだと思っていたのに……。

すると、あまりにも不躾に見つめすぎていたせいか、宗鷹さんが不機嫌そうに眉根を寄せる。

「聞いているのか」

「あ、はい。えっと、心当たりは……あり、ます」

私はすぐさま返事をして取り繕う。
ずっと溜まっていた心身の疲労と聞いて思い当たるのは、やはり櫻衣商事を退職した原因だろうか。

先輩の顔や笑い声が脳内に響いて、芋づる式にズルズルと、三年前からの出来事が思い起こされ始める。

本当は櫻衣商事の経営状況を改善する手助けがしたくて、就職したのに……。
結局、働いていた三年の間では何も成し遂げられなかった。

そんな日々の中で、タイムリミットが迫り来るような緊張感や言いようのない焦燥感に駆られていたのも事実だ。

「言われてみれば、最近なかなか夜も寝付けなくて……。眠っても、夢を見て魘される日が多かったです」
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