冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
もともと宗鷹さんは私に対して、非常に冷たく素っ気ない態度をとる人だった。
パーティーで顔を合わせる機会があっても、父や母と会話していながら、娘の私とは一切目を合わせないように徹底的に避けられていたし。

もちろん結婚を申し込まれてからの二年間だって、できるだけ私に関わらぬ態度は一貫しており、特別な変化はなかった。
だからむしろ、私は彼に嫌われていると思っていた。

祖父と古くから親交があったにしては、祖父母主催のホームパーティーには不参加だったし。物理的にも心理的にも、私たちの距離は遠過ぎる。

そう思えば、彼はなにも、私の体調を心の底から案じてくれているわけじゃないのだろう。

……やっぱり、一人暮らしをしようとした前科があるから、信頼できないって意味かな?
私が彼の前から逃げ出さないように、見張られているのかも。
流石にもう、逃げも隠れもしないのに……。

婚姻届に正式にサインもしたのだが、信頼がないのなら仕方がない。隣の家に下着が取りに帰れなくても、甘んじるしかないのである。

頭の中であれこれ考えながらお風呂をいただき、彼の言いつけ通り早めにバスルームを出る。
脱いだ着替えをいれるためにもらった紙袋の中に、本日着ていたセーターとミモレ丈のスカートを畳んで、仕舞いこむ。
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