冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
それから着替えとして置いてあった、チョコレートブラウンのVネックパーカーに腕を通す。

襟の内側にあるタグには、菊永ホールディングスがライセンス契約を結んでいるドイツのラグジュアリーナイトウェアブランド、〝Eid(アイト)Vertrag(フェアトラーク)〟の文字があった。
上品な雰囲気と色味が夜のゆったりとした時間を感じさせ、上質で保温性に優れたフランネル生地が心地良い、海外セレブに大人気のブランドだ。

合わせネイビーのパンツも渡されていたが、宗鷹さんのルームウェアなので腰回りが広い。
丈も長すぎで、全然きちんと履けなかった。ウエスト部分を折り曲げてみたり、足首部分をロールアップしたりもしたのだが、どうやってもずり落ちてきてしまう。

引きずったり踏んだりしたら悪いので、結局パーカーだけを貸してもらうことにした。
サイズが大き過ぎてまったく様にならないが、なんとか身なりを整えたあと、正面にある大きな鏡を見やる。

「ちょっと変な感じがするけれど、こうするしかない。……うん、これだけ長さがあれば、おかしくないよね?」

ぶかぶかな上に長すぎて指先すらほとんど出せない袖口から、ちょこんとパーカーの裾を摘んで、ちょっとだけ下に引っ張る。
ちょうど太ももを隠すくらいの丈になったので、ワンピースとして着れそうだ。
< 61 / 162 >

この作品をシェア

pagetop