冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
「そういえば」

そう言って再び私に覆い被さるように上半身を折って体を近づけた宗鷹さんは、至極真面目な顔つきで、「寝つきが悪い時は何かを抱きしめて眠ると、少しは良くなるらしい」と告げた。

「だ、抱きしめて、寝る……?」

「ああ。特に人肌に触れるとオキシトシンというホルモンが分泌されて、幸福感が増すんだそうだ。それが睡眠改善に繋がる」

オキシトシンとは別名『幸せホルモン』『愛情ホルモン』『抱擁ホルモン』などと呼ばれているもので、タッチケアなどによって脳内で分泌されるホルモンだ。
人との接触だけでなく、抱き枕やペットとの触れ合いでも分泌されるらしい。

以前、テレビで健康番組をチェックしている時に見つけて、その効果にあやかろうと自分でも抱き枕を購入した。
効き目はといえば、私の不眠の勝ちに終わったのだけれど……。

でも、ここには抱き枕なんか見当たらない。もちろん、可愛いペットもいないようだ。
< 85 / 162 >

この作品をシェア

pagetop