クールな騎士はウブな愛妻に甘い初夜を所望する
ランベールは必ずレティシアにとって最善の答えをくれる。それが、今はますます悲しい。
「私が十五歳で、あなたが十九歳の時でしょう。私はもうまもなく十八歳になるもの。そしたら三年よ。でも、あっという間だった。もっと早くに出会っていたらよかったわ。王宮にいたときから、もっとたくさん、あなたと一緒にいる時間があればよかった。色々な景色を一緒に見たかったわ」
レティシアは思わずそう口にしてしまってから、自分がいかに幼いことを言っているのかに気づき、慌てて訂正する。
「ごめんなさい。だだをこねた子どもみたいなことを。もう、しんみりしたお話はおしまいにしましょう。せっかくあなたが無事に戻ってきたんだもの」
「殿下……」
包み込むようなやわらかな声に、レティシアは心をなだめられる。ただそれだけで今はよかった。
そのおだやかな声をずっと聞いていたい。やさしい眼差しを注がれていたい。紅茶色みたいな、夕陽色みたいな、そんな彼の瞳にずっと映っていたい。
ずっと……それが叶わないのなら、せめて一緒にいられる残りのわずかな時間を大事にしたい。
「ねえ、ランベール。私のことは殿下、ではなく、レティシアと呼んでといったでしょう? ふたりのときはそれでいいの。楽にしてちょうだいって言ってもあなたはかしこまるでしょうから、せめて、もっと親しくしてほしいのよ」
「仰せのままに。レティシア様」
「ねえ、今日も楽しい話を聞かせてくれるんでしょう?」
レティシアが笑顔を向けると、ランベールも安心したように微笑んで、頷いてくれた。
「では、帰路で出会ったおもしろい旅芸人の話でもしましょうか」
「ええ。ぜひ聞かせて。私が紅茶を淹れるわ。ソファに座りましょう」
レティシアは喜んで両手を合わせた。
それからふたりは向かい合わせに座り、彼女はランベールの話に夢中で耳を傾けた。
この平穏な時間がどうか少しでも長く続きますように、と願いながら――。
***
向かいにいるレティシアが、エメラルド色の瞳を大きく輝かせて土産話を聞いているのを眺めながら、ランベールは彼女と初めて出会ったときのことを思い出していた。
ふたりが出会ったのは、ランベールが十九歳、レティシアが十五歳の時……彼女はそう思っているようだが、実際は違う。
「私が十五歳で、あなたが十九歳の時でしょう。私はもうまもなく十八歳になるもの。そしたら三年よ。でも、あっという間だった。もっと早くに出会っていたらよかったわ。王宮にいたときから、もっとたくさん、あなたと一緒にいる時間があればよかった。色々な景色を一緒に見たかったわ」
レティシアは思わずそう口にしてしまってから、自分がいかに幼いことを言っているのかに気づき、慌てて訂正する。
「ごめんなさい。だだをこねた子どもみたいなことを。もう、しんみりしたお話はおしまいにしましょう。せっかくあなたが無事に戻ってきたんだもの」
「殿下……」
包み込むようなやわらかな声に、レティシアは心をなだめられる。ただそれだけで今はよかった。
そのおだやかな声をずっと聞いていたい。やさしい眼差しを注がれていたい。紅茶色みたいな、夕陽色みたいな、そんな彼の瞳にずっと映っていたい。
ずっと……それが叶わないのなら、せめて一緒にいられる残りのわずかな時間を大事にしたい。
「ねえ、ランベール。私のことは殿下、ではなく、レティシアと呼んでといったでしょう? ふたりのときはそれでいいの。楽にしてちょうだいって言ってもあなたはかしこまるでしょうから、せめて、もっと親しくしてほしいのよ」
「仰せのままに。レティシア様」
「ねえ、今日も楽しい話を聞かせてくれるんでしょう?」
レティシアが笑顔を向けると、ランベールも安心したように微笑んで、頷いてくれた。
「では、帰路で出会ったおもしろい旅芸人の話でもしましょうか」
「ええ。ぜひ聞かせて。私が紅茶を淹れるわ。ソファに座りましょう」
レティシアは喜んで両手を合わせた。
それからふたりは向かい合わせに座り、彼女はランベールの話に夢中で耳を傾けた。
この平穏な時間がどうか少しでも長く続きますように、と願いながら――。
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向かいにいるレティシアが、エメラルド色の瞳を大きく輝かせて土産話を聞いているのを眺めながら、ランベールは彼女と初めて出会ったときのことを思い出していた。
ふたりが出会ったのは、ランベールが十九歳、レティシアが十五歳の時……彼女はそう思っているようだが、実際は違う。