クールな騎士はウブな愛妻に甘い初夜を所望する
「実は……ふと、初めてお目にかかった日を思い出していたのです。レティシア様もあれからずいぶん大人になったな……と思いまして。よりいっそう、お美しくなられましたね」
 器用に話題転換ができそうになかったので、ランベールは素直に思ったことを口にした。
「もう、どうして急に褒めるの。意味がわからないわ」
 レティシアはきょとんとしたあと、落ち着かない様子をごまかすように細い指で金色の髪を耳にかけ、頬をほんのりと薔薇色に染め上げた。褒められたことが、まんざらでもない様子だった。
 その彼女の表情を、ランベールはただひたすらに愛おしく思った。彼女を見ていて飽きることなどない。時間の許す限り、いくらだって見つめていたい。
 レティシアの愛らしい仕草を見ているうちに、ランベールは自然と力が抜けていた。
「ただ思ったことを素直に申し上げただけですよ。バルコニーから身を乗り出したりなどして、侍女を困らせるおてんばなところはあるようですが……」
「うそ。見られていたの?」
「しっかりと、向こう側からは見えるんですよ。おおいに丸見えです」
「そ、そんな……私は少しでも外のことが知りたかっただけだわ。べ、別にあなたのことを今か今かと待ち構えていたわけじゃないの」
 レティシアは必死に訂正しているが、彼女の顔の赤みは増すばかり。否定している言葉は、すべて反対のことを示していることくらい、ランベールにはわかる。
「左様でございますか」
 と、そっけない返事をしながらも、表情が緩みかける。レティシアが慕ってくれていることが心地いいのだ。
「何よ。嬉しそうに言わないで」
 レティシアには拗ねた目で睨まれてしまった。
「それはもちろん、嬉しいに決まっているではないですか。主君であられるレティシア様が、今か今かと待ち遠しく思ってくださっているのですから。騎士にとって、これ以上の喜びはありませんよ」
 儀礼的に言いながらも、それはランベールの本心だった。
「そ、そういうものかしら?」
「ええ」
「それなら、私も嬉しい。これからも、あなたの帰りを、ずっと楽しみに待っているわ」
 レティシアは飾らない無垢な笑顔を咲かせる。この花のような彼女を、心から守りたいとランベールはまた思った。
(忠義……か)
 ランベールは遠征に出る前に、国王と謁見の間で話をしたことを思い返していた。
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