クールな騎士はウブな愛妻に甘い初夜を所望する
(ランベールにだって、大切な人くらい……いるわよね)
あんなにかっこよくて素敵な人なのだから、いない方が不自然だ。それでも、目の前で他の女性と親しくしている彼の姿を見たくはなかった。せめて何も会話が聞こえないうちに遠ざかってしまいたい。
「クロエ、お願い。早く部屋に戻りましょう。身体が冷えてきてしまったみたいだし……風邪を引いて心配をかけたくないの」
せっかく元気になりかけたのに再びしゅんとしてしまったレティシアに気づいて、クロエが焦ったように一段と声を高らかにする。
「ええと、あ、そうだわ! あの、レティシア様、ダンスレッスンのお相手ですが、ランベール様にお願いしてみては?」
「え?」
弾かれたように、レティシアは顔を上げた。
クロエはいったい何を言い出すのだろう。
困惑しているレティシアを前にして、クロエはにっこりと笑顔を浮かべている。
「レティシア様、以前におっしゃったことをお忘れですか。一緒にいる時間を少しでも長く、大事にしたいのだと……そんなふうに思っておられるのでしょう?」
クロエはレティシアの両手をぎゅっと握った。その力と体温から、ただならぬ彼女の熱意が伝わってくるようだった。ひょっとして、ランベールとのことを応援してくれるつもりなのだろうか。
「え、ええ」
と、レティシアは気圧されつつ返事をする。
「それは、ランベール様だって一緒ですよ」
クロエはきっぱりと言い切った。
「で、でも、彼は騎士よ」
「我が国では、騎士の称号を持つ者は、甲冑を脱いだら貴族の一員ですよ。舞踏会でも、休憩の時間になれば彼らは着替えて、お目当ての女性と踊ってます」
と、クロエが片目を瞑る。
強引に話を進めようとするクロエに、レティシアは戸惑う。
侍女の言うことは確かにそうなのだが、ランベールの場合は、レティシアの護衛につくのが決まりではないだろうか。
本番では絶対に叶えられるわけがない――と、そこまで考えて、レティシアはようやくクロエの思惑を察した。
「ひょっとして、練習だったら叶えられる、ということを言いたいの?」
レティシアの回答に満足したクロエは、にっこりとした笑顔を作った。
あんなにかっこよくて素敵な人なのだから、いない方が不自然だ。それでも、目の前で他の女性と親しくしている彼の姿を見たくはなかった。せめて何も会話が聞こえないうちに遠ざかってしまいたい。
「クロエ、お願い。早く部屋に戻りましょう。身体が冷えてきてしまったみたいだし……風邪を引いて心配をかけたくないの」
せっかく元気になりかけたのに再びしゅんとしてしまったレティシアに気づいて、クロエが焦ったように一段と声を高らかにする。
「ええと、あ、そうだわ! あの、レティシア様、ダンスレッスンのお相手ですが、ランベール様にお願いしてみては?」
「え?」
弾かれたように、レティシアは顔を上げた。
クロエはいったい何を言い出すのだろう。
困惑しているレティシアを前にして、クロエはにっこりと笑顔を浮かべている。
「レティシア様、以前におっしゃったことをお忘れですか。一緒にいる時間を少しでも長く、大事にしたいのだと……そんなふうに思っておられるのでしょう?」
クロエはレティシアの両手をぎゅっと握った。その力と体温から、ただならぬ彼女の熱意が伝わってくるようだった。ひょっとして、ランベールとのことを応援してくれるつもりなのだろうか。
「え、ええ」
と、レティシアは気圧されつつ返事をする。
「それは、ランベール様だって一緒ですよ」
クロエはきっぱりと言い切った。
「で、でも、彼は騎士よ」
「我が国では、騎士の称号を持つ者は、甲冑を脱いだら貴族の一員ですよ。舞踏会でも、休憩の時間になれば彼らは着替えて、お目当ての女性と踊ってます」
と、クロエが片目を瞑る。
強引に話を進めようとするクロエに、レティシアは戸惑う。
侍女の言うことは確かにそうなのだが、ランベールの場合は、レティシアの護衛につくのが決まりではないだろうか。
本番では絶対に叶えられるわけがない――と、そこまで考えて、レティシアはようやくクロエの思惑を察した。
「ひょっとして、練習だったら叶えられる、ということを言いたいの?」
レティシアの回答に満足したクロエは、にっこりとした笑顔を作った。