クールな騎士はウブな愛妻に甘い初夜を所望する
「この中に花が挟んであります。クロッカスを押し花にしてみたのです。それで栞を作ってみてはどうでしょうか。ちょうどこの本の内容もレティシア様のお好みに沿うものかと思います。よろしければ、お休みの前にどうぞ」
にこやかにランベールが微笑む。いつもどおりの彼の様子に、レティシアは脱力してしまう。
「ランベール……あなたは、わざわざこれを届けにきてくれたの?」
「ご迷惑でしたら、申し訳ありません」
「ううん。そんなことない。あなたが私のためにしてくれることを迷惑なんて思ったこと一度もないわ。とっても嬉しい」
レティシアはランベールから渡された本をぎゅっと抱きしめる。彼が想ってくれていることが嬉しくて、ともすれば泣いてしまいそうだった。涙をぐっとこらえて、さっそく羊皮紙が差し込まれていたページを開いてみた。
羊皮紙は二つ折りにされていた。中を開くと、黄色のクロッカスが丁寧に押し花にされてあり、その形を見るだけでランベールの繊細なやさしさが伝わってくるようだった。
離宮に閉じこもっているレティシアが退屈しないように、彼女の好みを把握し、本の提案もしてくれた。
ランベールはいつだってレティシアのことを大事に考えてくれている人なのだ。
押し花の花をそっと指で愛でながら、レティシアはますます感極まってしまいそうになる。
「……素敵。あなたの言うとおりよ。萎れてしまって寂しいと思っていたの。栞も作ってみるわ。ありがとう、ランベール」
レティシアが笑顔を向けると、ランベールは微笑んだ。
「喜んでいただけたら光栄です。では、私はこれで……」
ランベールが一礼をして踵を返そうとする。とっさにレティシアは彼の腕を引き止めた。
「待って。ランベール」
何か用事があったわけではない。彼の側にもう少しでいいからいたい、彼の声を聞いていたい、そんな衝動が前に出てしまった。
(どうしよう。何でもないなんて言えない)
「どうしましたか?」
「あ、あの、あなたにお願いがあるの」
おずおずと、レティシアは口にした。
「なんでしょう。ご遠慮無くおっしゃっていただいて構いませんよ」
「明日から、ダンスのレッスンに付き合ってくださる? 私の相手役をお願いしたいの」
断られたらどうしようと思いながら、ランベールをじぃっと見つめる。
彼は珍しくぽかんとした顔をして、それから黙り込んでしまった。
にこやかにランベールが微笑む。いつもどおりの彼の様子に、レティシアは脱力してしまう。
「ランベール……あなたは、わざわざこれを届けにきてくれたの?」
「ご迷惑でしたら、申し訳ありません」
「ううん。そんなことない。あなたが私のためにしてくれることを迷惑なんて思ったこと一度もないわ。とっても嬉しい」
レティシアはランベールから渡された本をぎゅっと抱きしめる。彼が想ってくれていることが嬉しくて、ともすれば泣いてしまいそうだった。涙をぐっとこらえて、さっそく羊皮紙が差し込まれていたページを開いてみた。
羊皮紙は二つ折りにされていた。中を開くと、黄色のクロッカスが丁寧に押し花にされてあり、その形を見るだけでランベールの繊細なやさしさが伝わってくるようだった。
離宮に閉じこもっているレティシアが退屈しないように、彼女の好みを把握し、本の提案もしてくれた。
ランベールはいつだってレティシアのことを大事に考えてくれている人なのだ。
押し花の花をそっと指で愛でながら、レティシアはますます感極まってしまいそうになる。
「……素敵。あなたの言うとおりよ。萎れてしまって寂しいと思っていたの。栞も作ってみるわ。ありがとう、ランベール」
レティシアが笑顔を向けると、ランベールは微笑んだ。
「喜んでいただけたら光栄です。では、私はこれで……」
ランベールが一礼をして踵を返そうとする。とっさにレティシアは彼の腕を引き止めた。
「待って。ランベール」
何か用事があったわけではない。彼の側にもう少しでいいからいたい、彼の声を聞いていたい、そんな衝動が前に出てしまった。
(どうしよう。何でもないなんて言えない)
「どうしましたか?」
「あ、あの、あなたにお願いがあるの」
おずおずと、レティシアは口にした。
「なんでしょう。ご遠慮無くおっしゃっていただいて構いませんよ」
「明日から、ダンスのレッスンに付き合ってくださる? 私の相手役をお願いしたいの」
断られたらどうしようと思いながら、ランベールをじぃっと見つめる。
彼は珍しくぽかんとした顔をして、それから黙り込んでしまった。