クールな騎士はウブな愛妻に甘い初夜を所望する
レティシアは押し花にそっとキスをして、ドローイングデスクの引き出しにしまい込む。栞は、明るい時間に作ってみようと思う。
それから、レティシアはベッドに入ってから、さっそく本を捲ってみることにした。
『花の妖精と太陽の王様』という題の本には、花の妖精といわれる王女と、彼女が結婚する太陽の王様との出会いが描かれていた。
ロマンティックな話が好きなレティシアのために、ランベールはこの題材を選んでくれたのだろうか。或いは、政略結婚のことで悩んでいたことを気にかけてくれたのだろうか。そして彼はどんなふうに読み解いたのだろう。
レティシアはしばらく夢中で読みふけっていたのだが、いつの間にかうとうとしていた。やがて本の続きを想像しながら、そのまま夢の中へと吸い込まれていくのだった。
***
翌日、レティシアはドレスルームで舞闘会用のドレスに着せ替えられていた。件(くだん) のダンスのレッスンをするためだ。朝から、レティシアはずっと緊張してドキドキしていた。
まるでパレットに乗せられた絵の具のように、何着ものドレスが並ぶ中、レティシアは昨夜本に描かれていた花の妖精の黄色いドレスを選んだ。それはに、ちょうどランベールに貰ったクロッカスと同じ黄色だったからだ。
ひょっとしたら、彼はこの本に共通点を見つけ、クロッカスの押し花と一緒にレティシアに渡してくれたのかもしれない。
『花の妖精は、陽の光のように輝く黄色のドレスを着ていた。以前にひと目で恋をした太陽の王様を恋しく思っていたからだ。太陽の王様はその輝く光に導かれ、美しい彼女と出会い、彼女を舞踏会のダンスへと誘う』
その一文を思い出し、ぴったりだと思った。
ダンスのレッスンだということはわかっている。けれど、今のレティシアの心は、恋をする花の妖精と同じでありたかった。
「よくお似合いですよ」
クロエがドレスに似合う靴を用意してくれ、鏡を見ながら言った。
レティシアは胸の辺りに手を添え、ゆっくりと深呼吸し、靴に足を滑らせる。
でも緊張しすぎてうまく履けない。クロエが支えてくれてやっとかかとまで収まった。
「少し、コルセットが窮屈すぎましたか?」
クロエがレティシアの足元を押さえつつ、彼女を見上げながら訊いてくる。
「ううん。大丈夫。そうじゃないの」
それから、レティシアはベッドに入ってから、さっそく本を捲ってみることにした。
『花の妖精と太陽の王様』という題の本には、花の妖精といわれる王女と、彼女が結婚する太陽の王様との出会いが描かれていた。
ロマンティックな話が好きなレティシアのために、ランベールはこの題材を選んでくれたのだろうか。或いは、政略結婚のことで悩んでいたことを気にかけてくれたのだろうか。そして彼はどんなふうに読み解いたのだろう。
レティシアはしばらく夢中で読みふけっていたのだが、いつの間にかうとうとしていた。やがて本の続きを想像しながら、そのまま夢の中へと吸い込まれていくのだった。
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翌日、レティシアはドレスルームで舞闘会用のドレスに着せ替えられていた。件(くだん) のダンスのレッスンをするためだ。朝から、レティシアはずっと緊張してドキドキしていた。
まるでパレットに乗せられた絵の具のように、何着ものドレスが並ぶ中、レティシアは昨夜本に描かれていた花の妖精の黄色いドレスを選んだ。それはに、ちょうどランベールに貰ったクロッカスと同じ黄色だったからだ。
ひょっとしたら、彼はこの本に共通点を見つけ、クロッカスの押し花と一緒にレティシアに渡してくれたのかもしれない。
『花の妖精は、陽の光のように輝く黄色のドレスを着ていた。以前にひと目で恋をした太陽の王様を恋しく思っていたからだ。太陽の王様はその輝く光に導かれ、美しい彼女と出会い、彼女を舞踏会のダンスへと誘う』
その一文を思い出し、ぴったりだと思った。
ダンスのレッスンだということはわかっている。けれど、今のレティシアの心は、恋をする花の妖精と同じでありたかった。
「よくお似合いですよ」
クロエがドレスに似合う靴を用意してくれ、鏡を見ながら言った。
レティシアは胸の辺りに手を添え、ゆっくりと深呼吸し、靴に足を滑らせる。
でも緊張しすぎてうまく履けない。クロエが支えてくれてやっとかかとまで収まった。
「少し、コルセットが窮屈すぎましたか?」
クロエがレティシアの足元を押さえつつ、彼女を見上げながら訊いてくる。
「ううん。大丈夫。そうじゃないの」