クールな騎士はウブな愛妻に甘い初夜を所望する
ステップを意識すると、下を向いてしまうし、ターンがうまくできなくてまごついているうちに、いつの間にかランベールに何度も抱き寄せられている、といった感じだ。それも踊っているというより回されている状態なのだった。
だんだん目眩がしてきてしまった。
「少し休憩をしましょうか」
教師の言葉を聞いて、レティシアはその場でよろめきそうになった。とっさにランベールが支えてくれる。彼と近い位置で目が合い、鼓動が大きく跳ねた。
「大丈夫ですか。レティシア様」
「ありがとう。悔しいわ。あなたみたいにもっと余裕をもって堂々とできたらいいのに。淑女らしさを磨くには、どうしたらいいのかしら」
息も絶え絶えになりながら、レティシアは呟く。
すると、教師が言った。
「殿下、それは今後の課題になりましょう。焦らなくても大丈夫です。いつか、恋をすればいいのですよ」
「恋……」
禁句ともいえる言葉に触れられ、レティシアは顔を赤く染め上げる。この状態では、今、ランベールの方を向けない。
一方、ランベールは悠然と構えていて、いつもどおりだ。
「ランベール様については、エスコートは上手だし特に言うことはありませんね」
と、教師は舌を巻いた。
王族であるレティシアよりも、騎士として貴族に成った彼の方がずっと貫禄や気品があるし、所作のひとずつがとにかくなめらかなのだ。
レティシアは、尊敬と羨望の混じった眼差しを、ランベールに向けた。
何がここまで違うのだろう。四歳の年齢の差だろうか。それとも、経験の差だろうか。ちょっぴり悔しくなる。
不意に、彼が親しくしていたメイドのことが脳裏にちらつき、胸がちくちくと痛む。レティシアは邪な思考を慌ててかき消した。
「失礼します。お忙しいところすみません。先生、少しよろしいでしょうか」
誰かが尋ねてきたようだ。クロエの声のように聞こえた。
「少し、席を外しますが、おふたりで続けていてください」
そう言い、教師が広間を出ていく。
ちょっとだけレティシアはホッとした。少しの時間でいいから、息を整えたい。
ふたりきりになってから、レティシアは改めてランベールの方を振り向いた。すると、彼が心配そうに見つめてくる。
「レティシア様、無理なさらないでくださいね」
「ええ。大丈夫。なんとかついていっているわ。ランベールは、疲れていない?」
だんだん目眩がしてきてしまった。
「少し休憩をしましょうか」
教師の言葉を聞いて、レティシアはその場でよろめきそうになった。とっさにランベールが支えてくれる。彼と近い位置で目が合い、鼓動が大きく跳ねた。
「大丈夫ですか。レティシア様」
「ありがとう。悔しいわ。あなたみたいにもっと余裕をもって堂々とできたらいいのに。淑女らしさを磨くには、どうしたらいいのかしら」
息も絶え絶えになりながら、レティシアは呟く。
すると、教師が言った。
「殿下、それは今後の課題になりましょう。焦らなくても大丈夫です。いつか、恋をすればいいのですよ」
「恋……」
禁句ともいえる言葉に触れられ、レティシアは顔を赤く染め上げる。この状態では、今、ランベールの方を向けない。
一方、ランベールは悠然と構えていて、いつもどおりだ。
「ランベール様については、エスコートは上手だし特に言うことはありませんね」
と、教師は舌を巻いた。
王族であるレティシアよりも、騎士として貴族に成った彼の方がずっと貫禄や気品があるし、所作のひとずつがとにかくなめらかなのだ。
レティシアは、尊敬と羨望の混じった眼差しを、ランベールに向けた。
何がここまで違うのだろう。四歳の年齢の差だろうか。それとも、経験の差だろうか。ちょっぴり悔しくなる。
不意に、彼が親しくしていたメイドのことが脳裏にちらつき、胸がちくちくと痛む。レティシアは邪な思考を慌ててかき消した。
「失礼します。お忙しいところすみません。先生、少しよろしいでしょうか」
誰かが尋ねてきたようだ。クロエの声のように聞こえた。
「少し、席を外しますが、おふたりで続けていてください」
そう言い、教師が広間を出ていく。
ちょっとだけレティシアはホッとした。少しの時間でいいから、息を整えたい。
ふたりきりになってから、レティシアは改めてランベールの方を振り向いた。すると、彼が心配そうに見つめてくる。
「レティシア様、無理なさらないでくださいね」
「ええ。大丈夫。なんとかついていっているわ。ランベールは、疲れていない?」