クールな騎士はウブな愛妻に甘い初夜を所望する
「私は平気ですよ。このくらいなら」
爽やかな笑顔を向けられ、レティシアは嘆息する。
「そうよね。騎士だもの。日頃の鍛錬の方がずっと厳しいでしょう?」
「ですが、先生の厳しさもけっこうなものかと思いますよ」
くすくすと彼は笑う。
「そう! そうよね! 息をつく暇がないもの」
「では、先生もあのようにおっしゃっていましたし、ゆっくりワルツを踊りませんか」
「ええ。もちろん」
レティシアは笑顔で頷く。ランベールが手を握ってくれる。その手を握り返しながら、彼女は頬を赤らめた。
「そういえば、花の妖精と太陽の王様のお話……まだ途中までしか読んでいないけれど、素敵なシーンだったわ」
「今日の黄色のドレスは、あの本の花の妖精と一緒ですね」
「気づいてくれていたの?」
「ええ。そうかな、と」
「――花の妖精は、陽の光のような輝く黄色のドレスを着ていた。太陽の王様を恋しく思っていたからだ。太陽の王様はその光に導かれるように、彼女を舞踏会舞踏会のダンスへと誘う――そんなふうに書かれていたことを思い出して。それに、あなたがくれたクロッカスのお花も黄色だったからぴったりだと思ったの! そしたら、あなたの胸にも同じ花があったから、すごく嬉しかったわ」
はしゃぐレティシアを見て、ランベールは破顔する。我に返った彼女は、恥ずかしくなってしまう。
「ごめんなさい。こういうところが、未熟だなって思われる原因ね」
「なぜ謝る必要があるのですか。私は、あなたには、そのままでいてほしいと思っていますよ。それが、あなたの良さでもあるのですから」
やさしいランベールの言葉に慰められるものの、レティシアは素直には喜べなかった。
「でも、このままじゃいられないもの。いつか恋を……したほうがいいと、先生はおっしゃっていたわ。たとえば、婚約する相手と……」
そう言いかけて、レティシアはランベールを見つめる。
「そう、ですね。いつかは、レティシア様も、きっと素敵な恋をするでしょう。寂しい気がしますが、それも喜ばしいことですよ」
ランベールはそう言い、睫毛を伏せた。
彼の言葉に、レティシアは自身が傷ついていることに気付く。喉のあたりがきゅっと詰まるように痛くて、目頭が熱くなってきてしまう。
何かを言わなくちゃ、と焦る気持ちだけが、レティシアを後押しした。
爽やかな笑顔を向けられ、レティシアは嘆息する。
「そうよね。騎士だもの。日頃の鍛錬の方がずっと厳しいでしょう?」
「ですが、先生の厳しさもけっこうなものかと思いますよ」
くすくすと彼は笑う。
「そう! そうよね! 息をつく暇がないもの」
「では、先生もあのようにおっしゃっていましたし、ゆっくりワルツを踊りませんか」
「ええ。もちろん」
レティシアは笑顔で頷く。ランベールが手を握ってくれる。その手を握り返しながら、彼女は頬を赤らめた。
「そういえば、花の妖精と太陽の王様のお話……まだ途中までしか読んでいないけれど、素敵なシーンだったわ」
「今日の黄色のドレスは、あの本の花の妖精と一緒ですね」
「気づいてくれていたの?」
「ええ。そうかな、と」
「――花の妖精は、陽の光のような輝く黄色のドレスを着ていた。太陽の王様を恋しく思っていたからだ。太陽の王様はその光に導かれるように、彼女を舞踏会舞踏会のダンスへと誘う――そんなふうに書かれていたことを思い出して。それに、あなたがくれたクロッカスのお花も黄色だったからぴったりだと思ったの! そしたら、あなたの胸にも同じ花があったから、すごく嬉しかったわ」
はしゃぐレティシアを見て、ランベールは破顔する。我に返った彼女は、恥ずかしくなってしまう。
「ごめんなさい。こういうところが、未熟だなって思われる原因ね」
「なぜ謝る必要があるのですか。私は、あなたには、そのままでいてほしいと思っていますよ。それが、あなたの良さでもあるのですから」
やさしいランベールの言葉に慰められるものの、レティシアは素直には喜べなかった。
「でも、このままじゃいられないもの。いつか恋を……したほうがいいと、先生はおっしゃっていたわ。たとえば、婚約する相手と……」
そう言いかけて、レティシアはランベールを見つめる。
「そう、ですね。いつかは、レティシア様も、きっと素敵な恋をするでしょう。寂しい気がしますが、それも喜ばしいことですよ」
ランベールはそう言い、睫毛を伏せた。
彼の言葉に、レティシアは自身が傷ついていることに気付く。喉のあたりがきゅっと詰まるように痛くて、目頭が熱くなってきてしまう。
何かを言わなくちゃ、と焦る気持ちだけが、レティシアを後押しした。