クールな騎士はウブな愛妻に甘い初夜を所望する
そして、レティシアの部屋の前に立ったランベールは、ノックする手を一瞬、止めた。
心の準備はできているつもりだった。だが、彼女が話を聞いて納得してくれるかどうかは、また別の話だ。
日頃から彼女の言葉に揺れてしまいがちな自分を、なんとか律したいのだが、そうなれば、彼女を傷つける言葉をぶつけてしまいかねない。その塩梅が難しい。
燻った感情をため息に変え、ランベールはようやくドアを叩くのだった。
***
夜の帳がおりるころ、レティシアは身支度を整え、ベッドに横たわっていた。
まもなくランベールが来てくれる。早く会いたいと思う一方で、急に怖くなってしまい、少しでもいいから仮眠をして気持ちを紛らわそうとしたのだが、まったく眠れる気配はなかった。夕食を食べる気にもなれず、しまいには胃がきりきりと痛くなってきていた。
ノックの音が聞こえ、レティシアは飛び跳ねるように身体を起こした。乱れた髪を慌てて整え、なんとか平常心を装い、「どうぞ」と返事をする。その声は緊張で少し上ずっていた。
「失礼します」
と、入ってきたのはたしかにランベールなのだが、彼は護衛につくときの軍服ではなく、侍従長が着ているような燕尾服に身を包んでいた。
はじめて見る姿というよりも、騎士の彼が着ていいもののはずではないので、レティシアは驚いて目を丸くする。
「ランベール、その格好……いったいどうしたの」
「侍女に人払いのお願いはしましたが、この時間ですし、念の為……拝借しまして、このようにして参りました」
少し困ったように彼は言った。侍女というのはクロエだろうか。よく許可したものだな、と思う。
「とても似合っているけれど、なんだか不思議な感じね」
黒と白の軍服、セレモニー用の純白の正装、ダンスレッスンのときのフロックコート……そして今は燕尾服。見目麗しい彼は、何を着ていても似合う。
そんなふうにときめく想いと同時に、彼のただならぬ決意が感じられ、また不安がこみ上げてきてしまう。
「答え合わせをしましょうか」
と、ランベールは言った。たちまちその場に緊張が走った。
いつものように談笑する時間ではない。彼は話してくれるつもりでここにきたのだ。
レティシアは黙ったまま頷く。
もう目を逸らすことはできない。彼女はまず本の該当するページを開き、ランベールの前に差し出した。
心の準備はできているつもりだった。だが、彼女が話を聞いて納得してくれるかどうかは、また別の話だ。
日頃から彼女の言葉に揺れてしまいがちな自分を、なんとか律したいのだが、そうなれば、彼女を傷つける言葉をぶつけてしまいかねない。その塩梅が難しい。
燻った感情をため息に変え、ランベールはようやくドアを叩くのだった。
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夜の帳がおりるころ、レティシアは身支度を整え、ベッドに横たわっていた。
まもなくランベールが来てくれる。早く会いたいと思う一方で、急に怖くなってしまい、少しでもいいから仮眠をして気持ちを紛らわそうとしたのだが、まったく眠れる気配はなかった。夕食を食べる気にもなれず、しまいには胃がきりきりと痛くなってきていた。
ノックの音が聞こえ、レティシアは飛び跳ねるように身体を起こした。乱れた髪を慌てて整え、なんとか平常心を装い、「どうぞ」と返事をする。その声は緊張で少し上ずっていた。
「失礼します」
と、入ってきたのはたしかにランベールなのだが、彼は護衛につくときの軍服ではなく、侍従長が着ているような燕尾服に身を包んでいた。
はじめて見る姿というよりも、騎士の彼が着ていいもののはずではないので、レティシアは驚いて目を丸くする。
「ランベール、その格好……いったいどうしたの」
「侍女に人払いのお願いはしましたが、この時間ですし、念の為……拝借しまして、このようにして参りました」
少し困ったように彼は言った。侍女というのはクロエだろうか。よく許可したものだな、と思う。
「とても似合っているけれど、なんだか不思議な感じね」
黒と白の軍服、セレモニー用の純白の正装、ダンスレッスンのときのフロックコート……そして今は燕尾服。見目麗しい彼は、何を着ていても似合う。
そんなふうにときめく想いと同時に、彼のただならぬ決意が感じられ、また不安がこみ上げてきてしまう。
「答え合わせをしましょうか」
と、ランベールは言った。たちまちその場に緊張が走った。
いつものように談笑する時間ではない。彼は話してくれるつもりでここにきたのだ。
レティシアは黙ったまま頷く。
もう目を逸らすことはできない。彼女はまず本の該当するページを開き、ランベールの前に差し出した。