クールな騎士はウブな愛妻に甘い初夜を所望する
『騎士は、新しい国を作ろうとした。花の妖精への秘めた想いと決別し、偽物の太陽の王を討つために……』
 その文章を目で追ってから、ランベールの様子を窺う。彼は既に次の文章を目で追っていたようだった。
 何度も読んだから、レティシアには見なくても内容がわかっている。
『騎士は、平和の世界を望んだ。美しい花が咲きほころび、陽のあたる場所が、存在する世界を。花の妖精は、彼の心を救った。だが、太陽の王は、光が当たらない場所に花の妖精を隠した。独占するつもりなのだ。その罪を許すまいと誓う。悪辣な太陽の王は討つべきだ――』
 そんなふうに書かれていたことを、本当に彼は実行に移す気なのだろうか。
 レティシアは緊張しながら、唇を開いた。
「あなたは、『ある計画』を立てていた。それは、王女の輿入れが決まったあとに実行される予定だった?」
 なるべく慎重に尋ねた。
 回答を待ったが、ランベールは否定しなかった。だが、そのとおりだとも言わない。
 レティシアがじれったく思っていると、柱時計の方を見て、彼はようやく口を開いた。
「輿入れまで、あと一週間とちょっと、ですね」
 それが、肯定を意味しているものと捉えて、続けてレティシアはランベールに問いかけた。
「それと、何か関係があるの? 何があなたを追い詰めてしまったの? あなたの口から本当のことを聞きたいの」
 縋(すが)るような目を向け、レティシアが懇願すると、ランベールは彼女の頬に彼の手をそっと添えた。
「あなたを、守りたかったんですよ」
 まるで泣きそうな、やりきれないような表情で、ランベールがそう言う。その表情だけで、彼がどれほど心血を注いできたかが伝わってきて、レティシアは目頭が熱くなった。
「だったら、こんな計画なんて……」
 レティシアの言葉を止めるように、ランベールは首を横に振った。彼の決意は固いのだということが伝わってくる。
 彼が何か無茶なことをするのではないかと、ますますレティシアは焦るばかりだった。
「遅かれ早かれ、この国は狙われるでしょう。民の不満も収まりません。陛下は楽観視していますが、外側から内側から、少しずつほころびができていた。このままでは、いずれ国家が瓦解します。そんな恐れが、常にあなたの側にもあったのではないですか」
 それは、レティシアも不安に思っていた。彼女自身ずっと疑問に感じていたことだ。
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