クールな騎士はウブな愛妻に甘い初夜を所望する
 ランベールは縋りついてきたレティシアの肩をそっと押し返し、静かな瞳で彼女を見下ろした。
「レティシア様、あなただけは変わらず、民の光でいてください。たとえ離れていても、どこにいても、いつのときでも。私は、そういうあなたに救われてきたのですから」
 やさしい眼差しは、いつも彼がレティシアに向けてくれるものと変わらない。
 大好きな彼がここにいる。それなのに、ふたりの間にものすごく距離を感じる。この溝をどうしたら埋められるのか、レティシアにはわからなくなっていた。
 いくら手を伸ばそうとしても、彼はこの手をとってくれない。雲のように霧のように、どこまででもすり抜けていってしまう。結ばれる運命にはないと、言われているみたいだった。
 それだけに留まらず、彼はレティシアを同じ運命に立ち向かわせてさえくれない。そのまま見えなくなるまで、ただ黙って見送るしかないというのだろうか。もどかしさで喉の奥が痺れるように痛くなる。
「ランベール……私たちは、運命を分かつしか、それしか……ないの? それが身分の違いのせいだというの? それとも、私が王女で……信用できないから?」
 レティシアは声を振り絞って、ランベールに問いかける。彼の表情は再び険しくなった。
「私は、あなたを守りたいんです。輿入れをした先なら、あなたに害は及ばないでしょう。そこで本当の……太陽の王の元で幸せになってほしいと、思っていました。せめて、あなたを護る騎士として、それだけは叶えなくてはならない、と」
 レティシアはかぶりを振った。
「私は……そんなふうには望んでいないわ。あなたが護ってくれるのは嬉しい。けれど、犠牲になって ほしいなんて思ってないの」
 必死にレティシアが訴えても、ランベールは悲しげに微笑むだけだった。
「……少し、落ち着いて。視点を変えましょうか」
 そう前置きをしてから、彼は言った。
「この国に残ったまま、例えば、私とあなたが一緒になろうとします。しかし、引き離されるかもわかりません。また、計画自体が失敗するかもしれません。そしたら、どのみち混乱は起き、あなたは責任を問われ、すべてを失うことになるかもしれない」
「ランベール、私はそれでもっ」
< 49 / 97 >

この作品をシェア

pagetop