クールな騎士はウブな愛妻に甘い初夜を所望する
「それでもいいと本当に言えますか? 私が断罪されれば、あなたはそのとき、結局一人ぼっちになってしまうでしょう。ただひとり残ったあなたに、大勢が負の感情の矛先を向け、惨たらしい仕打ちをするかもしれない。そのときにはもう、あなたを守ってくれる人が誰もいない。そうして、ひとりで息絶えるような未来がきても、あなたは絶望しませんか?」
「それは……」
 レティシアは言葉をつまらせる。
 簡単に返事ができる内容ではなかった。
「それは、それだけは、どうしても避けなければならない絶対条件なのですよ、レティシア様。私は、あなたにそんな想いをさせたくない。もっと言わせてもらうなら、私は自分の命よりも、あなたのことが大事なんです。どうか、わかってください」
「いやよ。わかりたくない。私だって、あなたに重荷を背負わせたくないわ。あなたのことが大切なのよ」
 ふたりの考えは、平行線のままだった。
 どういったら彼が納得するのか、レティシアは必死に考えていた。せめて、諦めることだけはしたくない。
「……そうですか。どうしても私の考えが許せないというのなら、止めたいというのなら、私を今すぐ謀反の罪に問うために査問会に突き出せばいい。あなたにはその権利がある」
 ランベールの激しい拒絶に、レティシアは言葉を失った。さらに彼は続ける。
「クロエを呼びますか」
 と、呼び鈴の方へ視線をやった。
 ずっと前から、ランベールはもうとっくに覚悟を決めていたのだ。彼は心からレティシアの幸せを願ってくれている。情けのために、彼女の輿入れのあとを狙っていたわけではないのだ。
 彼に何を言ってあげられるだろう。彼を非難したいわけではないのに。どう伝えたら彼の心に響いてくれるだろう。
 彼の意に添えるようなことは何なのか、自分が言うべきことは何なのか。あれこれ考えすぎて、胃の中が重苦しいような居心地の悪さを感じた。
 それでもレティシアは黙ったままでいられなかった。
「一つだけ言えることは、私は、あなたの側でなければ、幸せになれないっていうことだけよ。どれだけあなたが尽くしてくれても、それだけは譲れないの。私ひとりだけが逃げ延びても、あなたの理想どおりになんてなれない」
< 50 / 97 >

この作品をシェア

pagetop