クールな騎士はウブな愛妻に甘い初夜を所望する
レティシアの瞳からたちまち涙が溢れ出す。視界が揺らいで、ランベールの顔が見えない。彼の心も見えない。同じように、彼は、レティシアの本当の心が視えていないのだと彼女は思った。
「なぜなら、私の心にはいつもあなたがいるから。あなたなしでは叶えられないの。あなたは、私を大切にしてくれる。けれど、この国の政治と一緒よ。肝心の私の気持ちを見ないふりして無視しているわ」
涙がいくつも頬を伝って落ちていく。
ランベールのことを思えばこそ、彼を非難したり、泣いて情に訴えたりするつもりはなかった。けれど、独りで背負おうとする彼のことを思ったら、どうしてもこらえきれなくなってしまった。
彼のことをこんなに大切に思っている人がここにいるのに、なぜ彼は、自分のことを大事にしないのだろう。なくなってもいい命なんてどこにもないのに。
「……レティシア様。私は――」
ランベールが何かを反論しようとしている。それを遮ってでも今、彼より先に伝えないといけない、とレティシアは思った。
「聞いて、ランベール。政略結婚は、王女として当然の責務だと思ったの。仕方のないことだと受け入れようとしていた。けれど、あなたを愛している私にとってそれは……心を失うことに等しい。そんな状態で、あなたを失ってまで、あなたが望んでいるような、民の光になんてなれない。私は、最後にひとりぽっちになる未来が来ても、それでも一秒でも長く、あなたの側にいたい。どれだけひどいことをされても耐えて見せる。あなたがいるなら、後悔なんてしないわ」
ふたりが一緒にいられる未来はどこにもない。だから諦めてほしいとランベールは言う。その代わりに、レティシアの無事と幸せを約束する、そんなふうに彼は説得している。
そういう彼のやさしさは痛いくらいわかっている。だからこそ、決めつけてほしくない。
彼だけが犠牲になる道、彼女だけが助かる道、交わらない二つの道を作ろうとする彼を、レティシアはどうしても止めたかった。
身分がふたりを分かつというのなら、同じ道を目指すためには、同じ目線に立たなければならない。王女殿下のままではいけないのだ。
彼が覚悟を決めたのと同じように、自分も覚悟を決めなければならない。そうでなければ、答えを出せない。
レティシアの覚悟はもう決まっていた。
「なぜなら、私の心にはいつもあなたがいるから。あなたなしでは叶えられないの。あなたは、私を大切にしてくれる。けれど、この国の政治と一緒よ。肝心の私の気持ちを見ないふりして無視しているわ」
涙がいくつも頬を伝って落ちていく。
ランベールのことを思えばこそ、彼を非難したり、泣いて情に訴えたりするつもりはなかった。けれど、独りで背負おうとする彼のことを思ったら、どうしてもこらえきれなくなってしまった。
彼のことをこんなに大切に思っている人がここにいるのに、なぜ彼は、自分のことを大事にしないのだろう。なくなってもいい命なんてどこにもないのに。
「……レティシア様。私は――」
ランベールが何かを反論しようとしている。それを遮ってでも今、彼より先に伝えないといけない、とレティシアは思った。
「聞いて、ランベール。政略結婚は、王女として当然の責務だと思ったの。仕方のないことだと受け入れようとしていた。けれど、あなたを愛している私にとってそれは……心を失うことに等しい。そんな状態で、あなたを失ってまで、あなたが望んでいるような、民の光になんてなれない。私は、最後にひとりぽっちになる未来が来ても、それでも一秒でも長く、あなたの側にいたい。どれだけひどいことをされても耐えて見せる。あなたがいるなら、後悔なんてしないわ」
ふたりが一緒にいられる未来はどこにもない。だから諦めてほしいとランベールは言う。その代わりに、レティシアの無事と幸せを約束する、そんなふうに彼は説得している。
そういう彼のやさしさは痛いくらいわかっている。だからこそ、決めつけてほしくない。
彼だけが犠牲になる道、彼女だけが助かる道、交わらない二つの道を作ろうとする彼を、レティシアはどうしても止めたかった。
身分がふたりを分かつというのなら、同じ道を目指すためには、同じ目線に立たなければならない。王女殿下のままではいけないのだ。
彼が覚悟を決めたのと同じように、自分も覚悟を決めなければならない。そうでなければ、答えを出せない。
レティシアの覚悟はもう決まっていた。