クールな騎士はウブな愛妻に甘い初夜を所望する
「私は国に残ります。他の誰とも結婚しません。あなたが謀反を起こすのなら、王族の私を拘束してくれればいいわ。いくらだって利用してくれて構わない。そしていずれ……命を絶たなくてはならない局面がきたら、そうするしか道がなくなったら、そのときはどうか、他でもないあなたの手で私を奪ってほしい。あなたにだったらそうされても構わない。それが、たったひとつの私の願いよ」
 レティシアは瞳をそらさずに、まっすぐに訴えかけた。
「どうして……」
 ランベールは悲しそうに表情を歪め、ほぼ衝動的にレティシアを抱きしめた。彼の胸に飛び込む形になり、レティシアは震える手で、彼にしがみつく。
「あなたは、なんてひどい人なんだ……私がそうはできないとわかっていて、そんなふうに言うのでしょう? なぜ、大切なあなたをこの手に……かけられるというのですか」
 ランベールの熱を孕んだ激しい声に、レティシアは、息が止まりそうだった。こんな直情的な彼は初めてだ。彼の声が、腕が震えていた。そんな彼のことがたまらなく愛おしくて、彼を失いたくないと心から思う。
「あなたが好き……ランベール。私を、奪って。ここから、連れ出して」
 レティシアはランベールの背中に腕を回し、ぎゅっとしがみついた。
 どんなふうに思われてもいい。どんなふうにされてもいい。彼になら……そういう気持ちが溢れて止まらない。
 それほど、レティシアはランベールのことを愛しているということに、彼女自身が気付かされていた。
 ランベールは何も言わず、レティシアを抱きしめていた。彼に迷いが生じているみたいだった。
「……ねえ、ランベール、あなたの気持ちが知りたい。私のことをどう思っているのか、あなたの声が聞きたい。そしたら、もうほかに何も望まないから……」
「本を読んでと言ったでしょう」
 そっけない返事はわざとかもしれない。レティシアはランベールの胸を軽く叩いた。
「そんなふうに言うなんて、あなたこそひどい人よ」
 彼女の頬は紅潮し、目が真っ赤になっていた。
 傷心のレティシアを見たランベールは、彼の方がまるで逃げ場を失った、手負いの獣みたいな顔をしていた。
「その前に、思い出話をさせてくれませんか」
「また話をそらすの?」
「いいえ。あなたへの想いを語るには、過去のことを話さなければいけないからです」
「過去のことって、どのくらい前のこと?」
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