クールな騎士はウブな愛妻に甘い初夜を所望する
「そんなある日、教会で行われる炊き出しのボランティアの手伝いをしにきたあなたに出会いました。先代の王と共に被災した民の慰労にきていたときのことです。花のような愛らしい姿に、一瞬で心を奪われたのを覚えています。美しい蝶を追いかけるように、私はあなたを目で追っていた。眩しい太陽のような、朝露に濡れた一輪の花のような、純潔の王女様……王族とは本当に別世界の人間なのだなと思いました。ただそこにいるだけで、力がもらえる気がした。呼び止めたいと思いました。ですが挨拶をすることがままならなかった。両親と兄弟を失ったショックから、言葉が出なくなっていたのですそれでもあなたは、二週間の訪問の間、毎日挨拶をして、それ以外にも話しかけてきてくれた。やがて私は少しずつ声を取り戻し、普通に話ができるようになっていきました。炊き出しのボランティアには、貴族が自分のステータスを上げるために仕方なくやっているだけの者もいるし、私のような境遇の子どもを蔑んだり、偏見の目を向けたりする者も少なくなかった。けれど、あなたは別け隔てなくやさしくしてくれましたね。人々の目をよく見て、状況を把握し、自分から行動をしていた。たった十一歳の少女に、その場にいた誰もが癒やされていた」
「そんな……私はただ、元気づけたかっただけだわ」
「今でもずっと覚えているんですよ。野に咲く花を指差し、あなたがさり際に言った言葉を」
『あの花を、私だと思っていてね。明日も、明後日も……来年も、再来年も、その先もずっと……』 ランベールが告げた言葉は、たしかにレティシアが伝えた言葉だった。なんとか勇気づけたくて、自分にできることを考えていた。ふと視界に映った一輪の花に目を奪われた。瓦礫や焼け跡に囲まれた土地でも、その花はたくましく、いつまでも咲いていた。
 自分がその場を去っても、明日がきても明後日がきても、来年も、再来年も、ずっと気持ちは側に寄り添っている、そういう意味を込めたかったのだ。。
「私はそのときに思いました。あなたは、ただの高嶺の花や温室育ちの姫ではない。レティシア様こそが民の光になるべき人だと」
 それからランベールはグランディアス王国の王立騎士学校に入学した。孤児の彼でも寮生活が望め、優秀な成績を収めれば、特待制度を受けられる。
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