クールな騎士はウブな愛妻に甘い初夜を所望する
 レティシアは自分で涙を拭おうとした。その手を、ランベールがとっさに捕まえて、手の甲を持ち上げるように握ってくる。彼女の細い指をやさしくなぞって、そこに唇を寄せた。
「ランベール……」
「私は、あなたが大事なんです。命よりも何よりも。あなたに恩返しをしたくて、あなたを守るために、志願して騎士になった。王女の護衛を進んで引き受けたのも、あなたに害をなすすべてのものから守るため。ずっと、あなただけの騎士でいたかったからです」
 ぼやけた視界の中、ランベールの顔が泣き笑いみたいに歪んで見えた。彼の想いを込めた言葉と、彼が触れてくれる指のやさしさが、彼の本心を伝えてくれる。
 レティシアは潤んだ瞳のまま、ランベールを見つめた。
「私は、レティシア様のことを、あのときから、ずっとお慕いしていました。それは、あくまでも憧れであり、我が主君への忠誠の気持ちです。ところが、いつからか……特別な感情に変わっていた」
 そう言うと、ランベールは握っていたレティシアの手を離し、今度は彼女の頬を両手で包み込んだ。
「あなたのことが好きです。今、この場でだけは、嘘偽りなく伝えさせてください」
「……っ」
 ランベールの告白に、レティシアは言葉にならなかった。
 彼がこんなふうに想ってくれているなんて知らなかった。やっぱり彼の気持ちを聞けてよかった。
 彼のことが大切で、愛しくて。胸がいっぱいで今にも張り裂けそうだ。レティシアはただ頷いて意思表示をするだけだった。
「レティシア様がどう読み取ってくださったかはわかりませんが、もう一つ、私には考えがあるんです。本の中にもあったように、ただ謀反を起こすだけではなく……」
 ランベールはそう言い、考え込むように俯く。レティシアは本の内容を再び思い出していた。
「新しい国を作る……ということ?」
「そうです。今あるグランディアスを捨てるわけではない。滅ぼしたいわけではない。あくまで生まれ変わることが必要だった。そのために、水面下で協力者を増やし、事を進めてまいりました。私以外にも、同じ目的を持った同志が大勢います。とはいえ、危険であることには変わりありません。だからこそ、慎重に動かしていきたいのです」
「そう、だったのね」
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