クールな騎士はウブな愛妻に甘い初夜を所望する
「運命共同体なら、そんなことを考えていたらだめですよ。沈むつもりの船に誰が乗りますか。自分が死ぬつもりはないですし、あなたを死なせるつもりもありません。その覚悟でいます。この国を、民を、そしてあなたを、幸せにするための改革を、ひとつずつ丁寧に進めるんです」
 鼓舞するように、ランベールは言った。もう、彼はレティシアを拒むことはしなかった。憑き物がとれたかのように、彼の表情にはふっきれた清々しさが現れていた。
「わかっているわ。だから、どうかその船に、私を乗せてほしい。私もあなたと同じ覚悟をするから」
 無論、さっき伝えた言葉は、嘘ではない。もしもランベールが死を覚悟してまで叶えようとしていることならば、レティシアもその覚悟で手をとることを示したかったのだ。
「ただ、これだけは言っておきますね。いつ死ぬかもしれなくても、私はあなたを愛してる。この気持ちは、これから先もずっと……何があろうとも、永遠に変わりありません」
 愛している、そう言ってくれたランベールの想いに、レティシアはとうとう我慢できなくなってしまった。
「幸せにするためだというのなら、そんなふうに、お別れみたいに言わないで……」
「できるなら生きて、ふたりで新しい未来を紡いでいきたい。そう思っています」
「そうよ。さっきあなたが言ってくれたように、絶望ではなく、希望を、抱いていきたい」
「希望……そうですね」
 ランベールは眩しそうに目を細めた。
 レティシアは思わず、ランベールに抱きつき、力いっぱいしがみつく。
 そして、ずっと伝えたかった想いを声にした。
「私もっ……あなたが好きよ。大好きなの。今だけじゃないわ。ずっと、これからも――」
 言い終わる前に、唇が塞がれていた。レティシアは驚いて目を丸くする。
「……もう、何度も言わないでください」
 ランベールは唇を離したあと、声を潜めて言った。
「どうして、最後まで言わせてくれないの」
 私も愛している、と言いたかったのに。
「騎士とはいえ、私もひとりの男です。そういくつも理性があるとは思わないで」
 彼は困ったように言った。
「いつなら、言ってもいいの?」
「いつか、愛を誓いあえる日がきたら……私から、あなたに言います」
「言ってくれなかったら、私から言うんだから」
 レティシアが睨むと、ランベールはやっと笑ってくれた。
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