クールな騎士はウブな愛妻に甘い初夜を所望する
「はい。王宮が鎮圧する頃には、市民にも動揺が広がっていくでしょう。それを抑えるのは、先代の正当な血を引くレティシア様しかいない、とランベール様はおっしゃっていました」
 民の光になってほしい、と彼が言ったことを思い返す。レティシアは自分の役割の大きさを身に沁みて感じていた。
「わかったわ。そういうことなら、急ぎましょう」
 レティシアは騎士とともに離宮を出た。
 離宮から正殿までは、だいぶ離れているので、待機していた箱馬車で移動した。
 自然に囲まれた離宮から、王宮へと移りゆく景色を眺めながら、レティシアは息をのんだ。
 幾つかの塔を過ぎ、正殿に向かう途中で、革命軍と思しき兵士の姿が至るところで見られた。対立している様子はないが、騎士と兵士がそれぞれ王宮を包囲しはじめていた。
 一方、使用人や従者たちは王宮から出るように命じられ、別の塔へと避難させられている。改めて現状を確認したレティシアは、震えが止まらなかった。
 今、やろうとしていることは、世界をひっくり返すということだ。ただ閉鎖した世界での安寧を求めていた者にとっては、ランベール率いる革命軍の動き、そしてレティシアの存在は悪となりうるかもしれない。
 けれど、そこに情けを見出しては、相手に無礼になる。こちらにも譲れない矜持があるのだ。この国を、民を、守るために、この先の未来を見ているからこそ、必要な改革がある。そういう信念の元で動いているのだから。
 それでも、できる限り血を流さないように。巻き込んでしまわないように、配慮しながら丁寧に動こうとしていたのだろう。そのことがよく伝わってくる。彼らしいやり方だ、とレティシアは思った。
 ランベールはこの国を心から愛してくれている。この国の守れる騎士なのだ。彼が命を賭して守ろうとしているものを、守りたい。
 彼が信じていると言ったその言葉を反故にはしない。レティシアは心の中でつよくそう誓う。
 今は、離れていても、手を取り合えるときがくる。そのために、それぞれの役目を全うしなくては。
(信じているわ。ランベール……あなたも、どうか私を信じていてほしい)
 レティシアは背筋を伸ばす。国王が拘束されている正殿の間まで、あと少しだ。

     ***

(ヴァレリー側の進みが早い、か)
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