クールな騎士はウブな愛妻に甘い初夜を所望する
 ランベールは前線の様子を気にしながら、騎士団の連携を確認する。そして王宮にいるレティシアのことを思い浮かべた。
 事前に彼女を迎えに行くはずだったが、ヴァレリー王国からの侵攻により、そうもできなくなってしまった。
 部下の隊員に伝言を頼んだが、大丈夫だろうか。彼女は無事でいるだろうか。きっと今頃、不安になっていることだろう。信頼できる人間との合図を、あらかじめ決めておいて正解だった。
 念には念を入れ、万全を期したつもりだが、革命を起こす前に、敵国に動かれてしまった今、騎士や兵士の数は半分に分断され、完璧とはいいきれない状況にあった。
 もちろん、敵が動くことを予測していなかったわけではない。万が一のための手はあった。最優先事項の作戦はあいにく変更をよぎなくされたが、これも彼の想定の範囲内だった。
 ただ、ヴァレリー側の勢いがつよく、やや後手に回っているところが気がかりだ。敵勢も必死なのだ。こちらの事情をよく掌握しているのが伝わってくる。
(……革命のあとを待つ気はない、信用に足らないということか)
 実は、ランベールは少し前から祖国ヴァレリー王国と通じていた。きっかけは、国境警備の最に知り合ったヴァレリー側の騎士から持ちかけられたスパイの話だった。
 ヴァレリー王国は、グランディアス王国をあわよくば乗っ取りたいと考えている。そうでなくても、なんらかの打撃を与え、有利な交渉を持ちかけようと考えていたらしかった。
 グランディアス王国の危機になるかもしれないヴァレリー側の策略が、革命の邪魔になるとよんだランベールは、危険を承知で引き受け、二重スパイを行うことを決意した。
 ランベールは、国内の状況を告げた上で、ヴァレリー王国と同盟を結びたいから、こちらの革命が落ち着くのを待ってほしい、と交渉した。
 だが、最終的にヴァレリー側の信用を得ることはできなかったようだ。交渉は決裂した。そればかりか、革命が起きる直前を狙ってやってきた。
 グランディアス王国が諸外国に信用されないのも無理はない。愚鈍な政策に溺れていたツケだ。
 革命を成功させるためには、まずはこちらがヴァレリー側を降伏させ、同盟を結ぶことを約束させるのが必須条件になる。
 失敗すれば、ヴァレリー王国だけでなく、脆くなった隙を突いて、他の国が攻め入ってくる危険がよりいっそう高まってしまうことだろう。
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