クールな騎士はウブな愛妻に甘い初夜を所望する
王族ならばしっかりしなければ、と気丈に振る舞っていたレティシアの強がりを、彼だけは見抜いていた。彼の前でだけは、レティシアは泣いたり笑ったり、いつも飾らないでいられた。
レティシアはやさしい彼のことがもっと好きになり、彼への信頼が強まると共に、彼への恋心もどんどん膨らんでいったのだった。
レティシアは甘酸っぱいマカロンとベリーを食べたあと、ぬるくなった紅茶を飲み干す。舌の上に苦い感触が少しだけ残った。
彼への想いは甘い、けれど、この恋自体はそんなに甘いものではない。
(こんな気持ち……いつまでも抱えていたって、どうにもならないのに……)
どんなに想い焦がれようとも、ランベールが側にいてくれるのは、あくまで騎士として王女であるレティシアを守ることが職務だからだ。身分の違うふたりが結ばれることは絶対にない。それは、わかりきっていることだった。
けれど、諦めようとすればするほど、彼への想いはどんどん募っていってしまう。そんな胸の重苦しさを解放したくて、レティシアはため息に変えた。
「失礼します。レティシア王女殿下、よろしいでしょうか」
その声を聞いて、レティシアはハッと我に返った。ランベールがこちらに到着したようだ。
「もちろんよ! どうぞ」
レティシアは瞳を輝かせ、声を弾ませた。沈んでいた気持ちがあっという間に浮上していく。悠長にソファに座って待ってなどいられなくて、すぐに立ち上がってドアの側に行く。
部屋の外にいた衛兵にドアを開かれ、ランベールが入ってくる。彼は甲冑を脱いでいたが、外での任務用の黒い軍服に身を包んだままだった。彼のマントが開け放った窓からの風でふわりと揺れ、内側の赤地の布が見え隠れする。
遠征から戻ってすぐにそのまま駆けつけてくれたのだろう。その理由を、レティシアは知っている。
「遠征ご苦労さま。無事で何よりです」
レティシアが笑顔で出迎えると、ランベールもつられたように微笑んだ。
「ありがたきお言葉、頂戴いたします」
恒例のやりとりに、レティシアはほっとする。先ほど感じていた、抱えきれなくなりそうな重たい感情が、あっという間に霧散されていく。
精悍な顔つきをした彼の顔が、一瞬にして柔らかくほころぶその表情が、レティシアはとても好きだ。幸せな気持ちになる瞬間だった。
「それから、こちらをどうぞ」
レティシアはやさしい彼のことがもっと好きになり、彼への信頼が強まると共に、彼への恋心もどんどん膨らんでいったのだった。
レティシアは甘酸っぱいマカロンとベリーを食べたあと、ぬるくなった紅茶を飲み干す。舌の上に苦い感触が少しだけ残った。
彼への想いは甘い、けれど、この恋自体はそんなに甘いものではない。
(こんな気持ち……いつまでも抱えていたって、どうにもならないのに……)
どんなに想い焦がれようとも、ランベールが側にいてくれるのは、あくまで騎士として王女であるレティシアを守ることが職務だからだ。身分の違うふたりが結ばれることは絶対にない。それは、わかりきっていることだった。
けれど、諦めようとすればするほど、彼への想いはどんどん募っていってしまう。そんな胸の重苦しさを解放したくて、レティシアはため息に変えた。
「失礼します。レティシア王女殿下、よろしいでしょうか」
その声を聞いて、レティシアはハッと我に返った。ランベールがこちらに到着したようだ。
「もちろんよ! どうぞ」
レティシアは瞳を輝かせ、声を弾ませた。沈んでいた気持ちがあっという間に浮上していく。悠長にソファに座って待ってなどいられなくて、すぐに立ち上がってドアの側に行く。
部屋の外にいた衛兵にドアを開かれ、ランベールが入ってくる。彼は甲冑を脱いでいたが、外での任務用の黒い軍服に身を包んだままだった。彼のマントが開け放った窓からの風でふわりと揺れ、内側の赤地の布が見え隠れする。
遠征から戻ってすぐにそのまま駆けつけてくれたのだろう。その理由を、レティシアは知っている。
「遠征ご苦労さま。無事で何よりです」
レティシアが笑顔で出迎えると、ランベールもつられたように微笑んだ。
「ありがたきお言葉、頂戴いたします」
恒例のやりとりに、レティシアはほっとする。先ほど感じていた、抱えきれなくなりそうな重たい感情が、あっという間に霧散されていく。
精悍な顔つきをした彼の顔が、一瞬にして柔らかくほころぶその表情が、レティシアはとても好きだ。幸せな気持ちになる瞬間だった。
「それから、こちらをどうぞ」