クールな騎士はウブな愛妻に甘い初夜を所望する
「叔父様は、富を失うことを恐れるあまりに、保守主義に偏りすぎたのではないですか。それが、大事な器を歪ませてしまった原因です。お気づきになりませんか? 臣下も、侍従も、民も、不安になり、疑問に感じていたのですよ。グランディアス王国はこのままどうなるのだろう、と」
 レティシアの真摯な訴えに、カルロスはついに言葉をつまらせた。自分の味方がどこにもいない現状を、改めて感じたらしかった。
「しかし叔父様は、それでも国王という立場をいいことに、現実から目を逸し続けてきたのです。国中のあちこちで市民の紛争が起こるようになりました。それはご存知のことかと思います。それをレジスタンスの単なる騒ぎであると軽んじて無視していた結果、我が国の最大の隙となり、今日、敵国が押し寄せてくることになってしまったのですよ」
 それを聞いたカルロスは、途端に顔色を変えた。
「まさか……戦が、起きてるのか。相手はどこだ」
 カルロスは今起きたばかりの謀反としか思っていなかったのだろう。いつもならば何かあれば国王の耳に届き、王命のもとに騎士団が動くのが通例だ。
 これも、ランベールの策だった。
「ヴァレリー王国です」
 レティシアがきっぱりと言い放つと、
「……そうか。ヴァレリー王国か」
 カルロスはようやく現実を受け止めたらしく、息をのんだ。
「騎士団の話によると、前からその予兆はあったそうです。ですが、『騎士団の判断で国王陛下に報告しなかった』んです。なぜだかわかりますか?」
 カルロスは黙り込んだ。君主に忠誠を誓っていた騎士が離反するということが、どれほど逼(ひっ)迫(ぱく)した様子だったかくらいはわかったことだろう。
 ランベールの話によると、以前からヴァレリー側から侵攻される予兆はあったらしい。実際に侵攻されたことを国王に知らされれば、王命により騎士団や兵が駆り出されてしまう。
 そうなれば、対外のことが優先になり、革命が頓挫することになりかねない。それを避けるために、彼は協力者を増やし、情報を錯綜させるように画策していたのだ。
 その話を思い返しながら、レティシアは言った。
「今、その騎士団が懸命に抑えようと動いています。我がグランディアス王国のために」
 それを聞いたカルロスはハッとしたように目を見開いたあと、たちまち表情を強張らせた。
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