クールな騎士はウブな愛妻に甘い初夜を所望する
「レティシアよ、認めよう。最初から、そなたが……女王になるべきであったのやもしれん。余は見くびっていたのだ、幼い……そなたのことを」
 王がようやく自分の非を認めた瞬間だった。
 きっと、自分がその器にないということは、王が一番わかっていたのかもしれない。もっと側にいて支える人間が、賢かったのなら、進言する人間がいたのなら、違う未来があったかもしれない。
「いいえ。私は……」
 レティシアは言葉を詰まらせた。それは、王だけでなく、彼女にも言えることだと思ったからだ。
 疑問に思うだけで行動に移せなかった。王だけでなく、王女である自分にも罪はある。
 もしもランベールが先陣を切って革命を起こしてくれなければ、グランディアス王国は何も変わらずにいた。内側から、外側から、いずれ崩壊していたことだろう。
 レティシアに民の光になってほしい、と彼は言った。太陽の女王になってほしいと彼は願っていた。
 けれど、本当に王になるべき人は――ランベールのような人ではないのか。
 そんなふうにレティシアが思い浮かべていたそのとき、静寂を破るような声が割って入った。
「レティシア様!」
 血相を変え、転がるようにやってきたのは、クロエだった。
「クロエ、いったいどうしたの」
 レティシアはクロエの肩を抱きとめ、彼女の顔を見た。
「ランベール様が……今、戻っていらしたのですが……っ」
 クロエはそれ以上言葉を紡げない様子で、息継ぎをするのが精一杯のようだった。彼女の後方に、息を切らした騎士の姿が見えた。
 レティシアは状況から察知し、さっと青ざめた。
(まさか……)
 ランベールの身に何かあったのだろうか。
 レティシアの顔から血の気が引く。彼女の脳裏に、ランベールの言葉がたちまち蘇ってくる。
『ただ、これだけは言っておきますね。いつ死ぬかもしれなくても、私はあなたを愛してる。この気持ちは、これから先もずっと……何があろうとも、永遠に変わりありません』
「すぐにっ、すぐに……連れていって!」
 レティシアは叫ぶよりも先に、その場から駆け出していた。
 騎士に先導され、正殿の間から、外へと飛び出す。クロエもあとからついてきた。
 部屋に到着するまでの間に、ランベールは怪我をしたのだと騎士から聞いた。
「とにかく、ランベールに会わなくちゃ」
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