クールな騎士はウブな愛妻に甘い初夜を所望する
 最後まで聞くのが怖くて、自分で確かめなければと思った。それはどの程度で、今どんな状況なのか。もしものことがあったら……そればかりが頭の中を旋回する。
(お願い。どうか……生きていて)

     ***

「こちらです」
 騎士に案内されるがままに部屋に入る。
 部屋には医師と従者、そして数名の騎士がいた。
 寝台に人の姿があり、肩から流れる血の色が見える。片側は腕まで真っ赤だった。それが負傷したランベールだとレティシアにはすぐにわかった。
「ランベール!」
 レティシアは寝台にいたランベールに駆けつける。青白い顔をして目を瞑っていた彼を見て、絶望が一気に胸に広がっていく。
「……ランベール! しっかりして! お願い! 目を覚まして!」
 再びレティシアが必死に声をかけると、彼は眉を顰め、ゆっくりと目を開いた。そして、焦点が合わない瞳に、ゆっくりと光が戻っていった。
「レティ、シア……」
「ああ、ランベール! よかった。生きていた。あなたに何かあったら……どうしようかと……」
 レティシアは脱力し、その場で崩折れた。
「……心配させてしまい、すみません。戻るのが遅くなってしまいました」
 ランベールは言って、レティシアの手を握ってくれる。だが、力が入りきらない様子だった。
「怪我は……大丈夫なの?」
「大丈夫ですよ。幸い、急所が外れていましたから」
「……よかった。ほんとうに……」
 まだ、膝ががくがくしている。震えが止まらなかった。ランベールが死んでしまったら、どうしようかと思った。
「あの。ちょうど気を失ったところを見たらしく……勘違いした侍女を止めたのですが、飛び出していってしまって」
 側にいた騎士が言った。
「……仕方ない。彼女には、レティシア様の母代わりのところがありますからね……」
 呼吸を整えながら、ランベールは言う。少しずつだが顔色が戻ってくる。
「もう、クロエったら……」
 レティシアは涙をぬぐい、泣き笑いみたいな顔になった。
「申し訳ありません。タイミングを見誤ってしまい……」
 と、騎士が申し訳なさそうに縮こまっている。側に控えているクロエも同様に頭を下げた。
「レティシア様、申し訳ありませんでした……反省しております」
「ううん。私も、動揺して、とにかく話を聞くより、会いたいって騒いでしまって……ごめんなさい」
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