クールな騎士はウブな愛妻に甘い初夜を所望する
 レティシアは慌てて間に割って入った。騎士やクロエは悪くないのだ。むしろ、一刻も早く教えてくれたことに、感謝している。
「悪いのは私だ。皆が切羽詰まって、動揺していることだろう。その責務を、主導者として、私が負わなくてはならない。この程度の怪我でうずくまっている場合ではない」
 ランベールは自分を叱咤するように言い聞かせ、ベッドから起き上がろうとした。
 けれど、彼の表情には明らかに苦悶の色が浮かんでいた。
 強がりだ、とレティシアにはわかった。背中から肩にかけて矢に貫かれたのだ。実際の傷は見た目よりも深いことだろう。
 いつ怪我をしたのだろうか。この状態で戦場から何時間も離れているのに帰ってきたのだ。ひょっとしたら、今夜、彼は熱にうなされるかもしれない。もし感染症にかかれば命だって危ないことには変わりないのだ。
 彼はそれだけ必死に戻ってきてくれた。自分よりも国のために。
 彼ほど、国を大事に思ってくれる騎士は他にいない。だからこそ、彼に賛同して動く者が多くいたのだ。そうでなければ、革命は成功しなかった。彼なくしては。
 レティシアは動こうとしたランベールを止めた。
 だが、その手を彼に掴まれてしまう。
「心配はいりませんよ。正殿の間に行かなくては、報告をし、終わらせなくてはなりません」
 レティシアはそれでも彼を妨害し、首を横に振った。
「大丈夫だから。ねえ、ここに花の妖精がいるでしょう。あなたは太陽の王になって国を照らして、私は民の光としてあなたを支えるの。ずっと考えていた。それが、私の答えよ」
 太陽の女王になるのは自分ではない。彼に、太陽の王になってほしい。そして、彼を支えたい。そんな強い願いと希望が、レティシアの中に芽生えていた。
「レティシア……」
 ランベールの瞳が揺れていた。彼は王になる気はなかったのだろう。常に影で人を支える道を生きてきた人だ。
 けれど、この革命は、紛れもなく彼が動かした。彼の志が、彼の想いが、人々の心を動かしたのだ。
 きっと、彼は、先代以上の賢王になる。
「約束よ。私を、妃にしてくれると言って。それで、あなたが王になるのよ」
 レティシアはランベールの頬を両手で包み込み、まっすぐに彼を見つめ、懇願する。
< 74 / 97 >

この作品をシェア

pagetop