クールな騎士はウブな愛妻に甘い初夜を所望する
 彼はなにか逡(しゅん)巡(じゅん)しているようだった。そして覚悟を決めるように息をのみ、しばし黙り込んだあと、静かに頷いた。
「約束します。必ず……」
 その声を聞いたとき、肌が粟立ち、体中の細胞の隅々までもが、熱くたぎるような想いがした。
 運命が大きく動く予感というのは、こういうことをいうのかもしれない。
「それなら、私はたった今から、国王陛下の代理です。混乱をおさめるのは、私の仕事でしょう。あなたは、もう少しだけ休んでいてほしい。今後のためにも」
「……わかりました。頼みます。レティシア、これを……」
 ランベールは一輪の花を、差し出した。土に汚れて萎びてしまっているけれど、彼がこれを見てレティシアを想ってくれたことは伝わってきた。
 必ず戻ってくると強い決意で、必死に帰ってきてくれた。国のためというのはもちろんだが、彼女への愛が、彼の原動力のひとつになっていたと感じられることが嬉しかった。
『あなたを守りたかったんです』
 いつも凛とした精悍な顔立ちの彼が、泣きそうな表情で想いを伝えてくれたことを、レティシアは一生忘れない。
 黄色のクロッカス。そこに込められた祈りは……『私を信じて』。
 大丈夫。私を信じて。彼を信じて。未来を信じて。
 これから先、この国を共に背負い、そして民に光を届け、そうして一緒に未来を歩いていくのだ。
 レティシアは涙を拭い、背筋を伸ばし、それから正殿の間に戻っていった。
その一方、ランベールは、たくましく成長した彼女の背を眺めていた。かつて戦争孤児として生き、彼女に憧れた少年 のころのように、希望に満ちた表情をしていた。

▼節タイトル
第六章 永遠の誓いを

▼本文
 その後――。
 王宮内の混乱は想像していたよりもずっと早くに鎮火した。ひとえにランベールが少しずつ国のために水面下で動いていた努力の賜物だろう。
 しばらくの間レティシアは新しく任命した大臣らの力を借り、負傷したランベールの代理を務めた。
 形ばかりの平和という窮屈な世界に押し込められていた民が、本当の意味での平和を知らされた日……それは、レティシアの誕生日だった。
 その祝祭の日、新王国の誕生と共に、新国王の戴冠式が執り行われ、近い日に、王女レティシアが国王の妃となり、民の母になることを宣言されたのだった。
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