クールな騎士はウブな愛妻に甘い初夜を所望する
 そして何より、ランベールとレティシアが長い間、一緒に過ごした大切な場所だ。思い入れもある。
 清掃はもちろん行き届いている。クロエが新婚のふたりのために部屋を飾り付けてくれていたらしい。
 離宮の二階に行き、レティシアの使っていた部屋に入ると、カーテンや窓やベッド、調度品のあちこちに、かわいらしい装飾がなされてあった。
 黄、オレンジ、ピンク、白……それぞれ飾られた装花やリボンの明るい配色に、レティシアはランベールと顔を見合わせておもわずぷっと噴き出した。
「クロエったら。こんなに派手にしてくれて」
 言いながら、レティシアはくるりと回って見せる。
「あなたの母親代わりのつもりで張り切っていたのでは。クロエは、レティシアが大好きだと言っていましたからね」
 と、ランベールが微笑む。
「私もクロエのこと大好きよ。結婚のこともとっても喜んでくれていたわ」
 レティシアが密かにランベールに想いを寄せていることを、クロエは察してくれ、いつも親切にしてくれていた。ずっと応援してくれていたのだ。
 もちろん今も、王妃つきの侍女として、側にいてくれる。とても心強い存在だ。
「ここから正殿の方を見ていると、度々叱られていたけれどね」
 レティシアが言うと、ランベールが頷く。
「言うか言うまいか、悩んでいたのですが……」
「なぁに? 心配になっちゃうじゃない」
「いえ。大したことでは……」
 と、前置きした上で、ランベールは言った。
「ここから騎士団の様子は見えにくいかもしれませんが、我々がいた場所からは、はっきりと深窓の王女殿下の姿は見えていたわけです」
「えっ……そうなの?」
 レティシアは目を丸くして、しばし逡巡したのち、顔を真っ赤に染め上げた。
 今か今かとランベールのことを待ちわびていたことを、他の騎士たちに知られていたなんて。
 そんな彼女を見て、ランベールはふっと笑みをこぼす。
「私としては、やきもきしましたけれどね。美しい王女殿下に想いを寄せる連中は多くいましたので……」
「そんな……」
「ですが、今は、堂々と自慢できるわけですね。私の妃として」
 そう言い、ランベールはバルコニーの窓を開き、レティシアの肩を抱く。そうしてふたりは並んで空を仰いだ。
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