クールな騎士はウブな愛妻に甘い初夜を所望する
「もちろん。これからもずっと……私たちは一緒ですから」
 そう言って、ランベールはレティシアをやさしく抱きしめた。
 レティシアはその身を預け、目をつむる。彼女の瞼の裏には、笑い合うふたりのもとに駆けよってくる天使の姿が浮かびあがっていた。

▼節タイトル
□終章 ~エピローグ~

▼本文
 ランベールとレティシアの国王夫妻は、ある日、教会から王城へと馬車を走らせていた。
 国の情勢がだいぶ落ち着いてきた頃を見計らい、ふたりは定期的に養護施設や教会を巡っている。今日もボランティアの手伝いに出向き、これから城に戻るところだった。
 季節は、長く厳しい冬を越え、あたたかな春を迎えていた。もうまもなくユーフォリア王国の建国から一年が経過しようとしている。
 ランベールは、民と触れ合うレティシアを見て、昔彼女と出会ったときの面影を重ね合わせていた。
 彼が光を見つけたように、どうか一人でも多くの民の心の救いになればいい。民の光になれればいい。そんなふうに願いながら……。
「みんな目がきらきらしていたわね」
 レティシアがにこやかに言った。
「そうですね。以前に訪れたときよりも、活気があって何よりです」
「またあの街にもいきましょう。その隣の村にも」
 レティシアの誘いに、ランベールは頷き返す。
 ふたりは王城へと戻ったあと、先代の王……レティシアの父が眠る墓地を訪れた。ちょうど命日に当たる今日、近況を報告するためだ。
 正殿と離宮のちょうど間にある、少し離れた小高い丘に、歴代の王が眠る墓があった。その中の一番新しげな四方の墓石には、フリードリヒ二世の名が刻まれている。
 ランベールは街の花屋で用意した花を墓に手向け、恒例の懺悔をしていた。
「レティシアが、女王陛下であってもよかったのでしょうけれど……」
 今でも自分が王にふさわしいのかこの採択でよかったのか、最善であったのか、不意に考えることがあるのだ。かの賢王ならば、どうしていただろうかと、思い悩むこともある。
 顔を上げると、レティシアがなぜか困ったような顔をしていた。
「あなたは、王の器にある人よ。間違いないわ。それでも、怠慢になることなく、真剣に向き合っている。素晴らしいことよ」
 微笑みかけられ、ランベールは少しきまりわるかった。見透かされてしまったようだ。
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