クールな騎士はウブな愛妻に甘い初夜を所望する
 手ぶらで帰ってきたランベールに、ひとりの侍従が首をかしげた。
「いや。今度、妃をこちらに連れてきたいと伝えただけだ」
「それはきっと妃殿下が喜ばれますね」
 もうひとりの年若い従者は表情をほころばせた。
「ああ。今日は土産話だけにするよ」
「承知しました。では、出立を……」
 侍従が御者に声をかける。
 国王を乗せた馬車は再び森の中へと駆けていき、王城へと戻っていった。

     ***

 城に戻ってすぐ、ランベールは王宮内のレティシアの私室を訪ねた。
 どうやら、ちょうど文化交流会が終わった後らしい。クロエと何か話をしている声が聞こえてくる。
 ノックをすると、すぐに返事が聞こえた。衛兵の手でドアが開かれた途端、レティシアがこちらに駆け寄ってくる。彼女の側に控えていたクロエはランベールの姿を見て、恭しく頭をたれた。
「おかえなさい。ランベール」
「レティシアも文化交流のお務め、ご苦労さまでした」
「ありがとう。とても楽しかったわ。ルティ王国はどうだったかしら?」
「南の国のルティは、年中夏のような気候だからか、港町に活気がありましたね。商船がいくつも帆を張っていました。オレンジやレモンやオリーブのような果実の出荷が多くて、着ているものは軽装が多く、小麦に焼かれた肌が健康そうです。肌を露出したダンスが流行のようですね。こちらの夜会の激しいダンスよりも、もっと陽気な感じです」
「楽しそう。あなたも踊ってみたの?」
 レティシアは興味津々といったふうに瞳を輝かせている。
「まさか。私は見物させていただいただけですよ」
 ランベールは困ったように微笑んだ。
「あら、残念。ちょっと見てみたかったわ。いつか一緒に外遊に行けたらいいわね」
「機会を窺っておきましょう。レティシアはどうでしたか?」
「とっても楽しかったわ。西のヴァレリー王国の王女殿下もお花がとっても大好きでお花の刺繍にこっているんですって。花言葉の詩集もお好きなんだそうよ。それで、お互いの国にない品種の話になって、よければ種の交換をできないかしらっておっしゃっていたわ」
「そうですか。詳しい話をまた聞かせてください。ヴァレリー王国とは特に色々ありましたから、もっと友好を深める必要がありますし、次の議会にあげることにしましょう」
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