ボーダーライン。Neo【中】

「それで。今週のMパラでも一緒に出るんでしょう? あたし録画して絶対見るから」

 うん、と穏やかな声が鼓膜に溶ける。

『ありがとう。その為に、電話くれたんだ?』

「……あ。うん……」

 やっぱり、図々しかったかな、と思い、あたしは唇を噛んだ。

『金曜の生放送、頑張るから』

「……ん」

 それから数十秒、沈黙が流れた。

 用件を伝えたのだから、さっさと電話を切らなければいけない。

 そう思うのに、彼の息づかいを電話越しにでも感じていたくて、つい切れずに耳を澄ましてしまう。

 ーーもっと話したい。

 面白おかしい話題を振って、檜の笑い声を聞きたいと思うけれど、会話のネタが思い浮かばない。

 電話の向こうでは檜が困っているかもしれない、そう思い、仕方なく吐息をもらした。

「あ……、ごめ。忙しい、よね? もう、切るね?」

『……あ、うん』

「……じゃあ」

 あたしは名残惜しく、スマホの赤い終話ボタンをタップした。

 人気アーティストと少しの間でも電話で話せるなんて、ファンからしてみれば身に余る光栄だよね。

 だからこれ以上を望んではいけない。
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