ボーダーライン。Neo【中】

 自分にそうやって言い聞かせるが、やはり我慢出来ずに、一度照明の落ちたスマホのロックを解除して彼のアドレスへ一通のメールを打ち込んだ。

【迷惑だったらいいの。だけどまた。秋月くんと電話で喋りたくて……。
 また、連絡してもいいかな?】

 淡い期待を込めて送信し、返事を待ってみる。

 ーーあ。

 予想に反して、スマホは電話の着信音を鳴らした。

「も、もしもし?」

 声がつかえ、小さな咳払いをもらしてしまう。

 緊張していると感じた。

『あのさ。俺は別に、電話で話したりとかは構わないんだけど』

「……うん」

『幸子は、迷惑じゃないの?』

「え?」

『婚約者の手前、別の男と連絡取ったりして……大丈夫?』


 ーー慎ちゃん……。


 即座に彼の顔が浮かび、あたしは少し、沈黙した。

 大丈夫じゃない。以前のあたしならそう答えただろう。

 例え電話であっても、特別な用件の無い異性と話をするなんて、浮気としか思えないからだ。

 けれど、あたしは笑みを浮かべ、大丈夫よ、と答えていた。

「この間会った時。あたし随分と酷い事言って、気まずい別れ方しちゃったし。
 あなたと喧嘩別れとかは、したくないの」

 言ってから気がつく。

 芸能人だから、きっとそう捉えられたかもしれない。

 あたしはハッとして、言い淀んだ。

< 132 / 284 >

この作品をシェア

pagetop