ボーダーライン。Neo【中】

 ◇ ♂

 僕は一人になった楽屋で顔を覆っていた。

 顔の中心が熱くなり、赤面しているのだと自覚するが。

 失言だったな、と最後に告げた言葉を思い返し、ため息をもらした。

 通話の切れた端末を見るとはなしに見つめ、ぼんやりと思った。

 気まずいまま別れるのが嫌なだけで、きっともう幸子の中では終わった恋と割り切れているんだ。

 僅かに俯き、苦笑する。

 ーー狡いよなぁ……幸子は。

 けれど、そんな彼女だからこそ惹かれるのかもしれない。

 ーー何でこんなに好きなんだろう。

 独りよがりに想っていたって、どうせ叶わないのに。

 まるで中毒だ。

 幸子は飴と(むち)を巧みに使い分け、僕の心を捕らえて離さない。

 幸子への気持ちが落ち着いて来た頃、また優しくされ、不毛な想いにどっぷりと浸かり込む。

 けれどそう気付いたからこそ、それも良いか、と思えた。

 次に幸子と会えた時は、素直に彼女の幸せを祝福出来そうな気がする。

 好きだからこそ、相手の幸せを願う。以前(まえ)に透さんと話した結論だ。

 過去、幸子にあげた誕生日プレゼントがふと頭に浮かび、閃いた。

 手帳で仕事の予定を確認し、僕は鞄を手に楽屋を後にした。


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