ボーダーライン。Neo【中】

 やがて就寝時間を迎え、あたし達は布団に横たわった。

 暗い室内に豆電球の明かりが落ち、ゆっくりと瞼を閉じる。

「なぁ、サチ」

 肩に、慎ちゃんの男らしい手が触れる。

「……ちょっとだけしよっか?」

 隣りの布団からにじり寄る彼を見て、あたしは僅かに眉を寄せた。

「……ごめんなさい。今日はちょっと」

「え……」

 慎ちゃんがあからさまに眉を下げ、落胆する。

「でも、サチ。()()じゃないよな? 普通に風呂浸かってたし」

「そうだけど。ただ……そういう気分じゃないから」

「……」

 慎ちゃんは無言になり、また自分の布団へと潜った。

「おやすみなさい」

「……おやすみ」

 少し不機嫌そうな声に、罪悪感が生まれる。

 あたしは隣りの彼に背を向けて、また目を瞑った。

 頭の中に、音楽番組で見た檜の映像を思い返してみる。自然と気持ちが落ち着き、ふぅ、と静かに息をついた。

 ーー明日、仕事に行く前に続きを観よう。

 そう思って一旦は目を閉じるのだが。

 隣りから慎ちゃんの寝息が上がるのを合図に、細く目を開き、枕元に置いたスマホを取った。

 ホームボタンで一度真っ暗にしたスマホを点けると、新しくメールが届いていた。

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 差出人: h-a-0820Live@……

 宛先: 桜庭幸子

 件名なし

 今日 21:38

 改まって言われるとなんか恥ずかしいな(笑)メールありがと。おやすみ(( _ _ ))..zzzZZ

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 顔文字の入った文面が、檜らしくてほっこりしてしまう。

 ーー嬉しい。

 あたしはゆるゆるとはにかみ、布団の中へ潜り込んだ。


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