ボーダーライン。Neo【中】
あれからたったの五ヶ月。
月日と共にあたしの夢に似た想いは薄れ、言い知れぬ不安と寂しさが胸中を埋め尽くしていた。
何故こんな想いになるのだろう。
自分に問いて、原因は一つしかないと悟る。
あのクリスマスの夜に、檜と再会したからだ。
「……久しぶり?」
結婚式にお決まりのブーケトスが始まろうという時、不意に肩を叩かれ振り返る。
ーーあ。
胸の奥が微かに疼き、キュンと締め付けられる。あたしは彼の姿を見つめ、頼りなく眉を下げた。
「ええ。久しぶり、だね?」
挙式が始まる前、教会に着いた瞬間から彼の存在には気付いていた。
檜はストライプスーツを身に纏い、少しカジュアルな雰囲気だった。
髪は前から後ろへ無造作に流し、顔にはサングラスを掛けている。
誰が見ても芸能人かモデルさんにしか見えない。
顔見知り以外で、列席者の何人かがチラチラと檜を見ていたのもそのせいだ。
ーーやっぱり本物は違うなぁ。
テレビで観るより迫力がある。
あたしは足元を見つめ、小さく微笑んだ。
少し離れた所で、ワッと歓声が上がった。
見ると、水城さんの友人であり、元教え子でもある女の子が、ブーケを手に喜んでいた。
「あの花にどれだけの効果が有るのか分かんないけどさ。次は幸子の番だな?」