ボーダーライン。Neo【中】
「気付いた? これ、加工して作って貰ったんだ。
トップは、むかーし昔。俺が初めてあげた誕生日プレゼントだよ?」
言いながら、檜の手があたしの手を掴み、手の平にシャラっとそれを置いてくれた。
今から六年前の、二十六歳の誕生日プレゼントだ。
檜が音楽活動とバイトを両立させて買ったあの華奢なリング。
もっと言えば、別れを決断したあの時、無理やり送りつけたあの指輪だ。
あたしは手のひらのネックレスをしんみりと、物哀しい想いで見つめた。
あの頃、日常と化していた部屋デートで、彼に七号の指輪をプレゼントされた。
檜は右手ではなく、何故か左手の薬指にはめてくれ、喜びで涙が滲んだ事まで思い出した。
「あ、ありがとう」
あたしは思い出と共に、それをギュッと手で包み込んだ。
「いや。……て言うかさ、やっぱりこれは幸子の物だし、俺が持っててもしょうがないから」
檜は頬を掻き、若干、照れ臭そうに笑う。
「それに、指輪をそのまま返したら、きっと彼氏の心証も良くないと思って。ネックレスにした」
あたしは俯き、そうだね、と微笑んだ。