ボーダーライン。Neo【中】

 胸がいっぱいで、ありがとうの言葉以外に、何を伝えればいいのか見つからない。

 ありがとう、ともう一度礼を述べ、彼からのプレゼントを鞄の中に仕舞った。

「一応断っておくけど、式には呼ばないでくれよ?」

 檜の台詞に、あたしはツイと目を上げる。

「それ以前に。あたし、あなたの住所知らないし。招待状だって送れないわ」

「それもそうだった」

 おどけて肩をすくめる彼を見て、あたしはクスクスと笑みをこぼした。

「……今まで色々ありがとう」

「え……?」

 あたしは笑顔を固め、さよならを予期した台詞を真顔で聞いていた。

「今の俺があるのはさ、幸子の存在が有ったからで。こんなに好きになれたのは、幸子が初めてだった」

 心臓の奥がズキ、と痛くなる。

「多分、初恋だった。幸子の事を考えてる時って凄い幸せで、幸子さえいれば、もう他には何もいらねーって。ずっとそんな気持ちだった。
 だから絶対に諦めたく無かったし、手放してたまるかって……そう思ってた」

「…….檜」

「でもさ、もう俺もいい大人だし。いつまでも幸子の重荷でいるのは嫌なんだ。
 ……だから今日で終わりにする」
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