ボーダーライン。Neo【中】
あたしは慌てて俯いた。
あたしの方こそ、もうとうが立った大人なのだ。
自らが望んで選んだ道を、ちゃんと淀みなく歩んで行かなければいけない。
あたしは指先で涙を拭い、檜に最高の笑顔を向けた。
ありがとう、の意味を込めて。
過去を振り返らずに、ちゃんと未来を見るために。
その日の夜。心がざわざわして落ち着かず、あたしは数年ぶりに日記をつけた。
慎ちゃんは今日も仕事で遅くなるらしい。
過去、檜と別れてからというもの、日記をつける意味を見出せず書かずにやめてしまった為、日記帳にはまだ空白のページが沢山残っていた。
続きのページには書く気になれず、裏表紙から数えて二ページ目に今日の日記を書いた。
【 五月二十日 快晴
今日は水城さんと内田くんの結婚式だった。二人とも凄く幸せそうで羨ましい。
好きな相手と結婚するってあんな表情になるんだね。
あたしは……どんな顔で挙式を迎えるんだろう。
全然予想がつかない。
過去、檜と結婚したいと思った事が有った。あの人と一緒になれるなら、何にも要らないって本気でそう思ってた。
だけど今日は……。檜から永遠の別れを告げられた。
誕生日プレゼントに、加工したネックレスと引き換えに。
約束通り、部屋の鍵も返してしまった。
檜との接点は……もう何も無い。
これで良いのかな?
こんな曖昧な気持ちで、あたしはどうしたらいいの?】